糖尿病の人は死にたくなければ…膵臓がん検査を忘れてはいけない!

公開日: 更新日:

糖尿病専門医だけに任せっきりは危険

 なぜ、線量が足らなかったのかというと、膵臓の近くに十二指腸があり、当たりすぎると十二指腸からの出血・穿孔のリスクがあるからです。

 大腸であれば焼灼療法などさまざまな対応ができるのですが、十二指腸からの出血は治せません。

 すでにMRI誘導放射線治療で、膵臓の動き・腸の動きを見ながら照射を行うことが始まっていて、国立がん研究センターからは5回でかなり良い成績と副作用の少なさを発表しております。

 当院ではまだそこまで短くやっておりませんが、いずれにせよ手術の代わりに高精度の放射線治療を、という時代は近いのかもしれません。

 また、手術ができない膵臓がんは大きくは2つに分けられます。局所だけ進行している(リンパ節転移まで)と肝臓などほかの病気にも進行している場合です。

 後者は通常は抗がん剤による治療が一般的です。近年ほかのがんで急激に使われるようになった免疫チェックポイント阻害薬はあまり膵臓がんではよい成績が出ておらず、出番は限られております。

 局所だけ進行の膵臓がんでは抗がん剤に加えて放射線治療を行うことが多い。この放射線治療も近年は高精度放射線治療のひとつである強度変調放射線治療(IMRT)によって行うのが一般的になりつつあります。また小さくなった一部の患者さんでは手術も試みられています。

 膵臓がんの検査や治療法はたくさんあるのに、そこまでたどり着かずに亡くなる糖尿病の患者さんが多いのは残念なことです。

 糖尿病になったら、ただ糖尿病専門医の先生に診ていただくだけでなく、ぜひ膵臓の検査を定期的に受けていただきたいと思います。

▽黒﨑弘正(くろさき・ひろまさ)江戸川病院放射線科部長。1995年、群馬大学医学部卒。医学博士。日本専門医機構認定放射線専門医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医。JCHO東京新宿メディカルセンターなどの勤務を経て2021年9月から現職。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    中日ポスト立浪は「侍J井端監督vs井上二軍監督」の一騎打ち…周囲の評価は五分五分か

    中日ポスト立浪は「侍J井端監督vs井上二軍監督」の一騎打ち…周囲の評価は五分五分か

  2. 2
    小池都知事が“アキバ降臨”も演説ドッチラケ…若者文化アピールに「うそつき!」とヤジ飛ぶ

    小池都知事が“アキバ降臨”も演説ドッチラケ…若者文化アピールに「うそつき!」とヤジ飛ぶ

  3. 3
    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

    新関脇・大の里の「大関昇進の壁」を親方衆が懸念…看過できない“練習態度”の評判

  4. 4
    芸能事務所の社長には「三浦友和のNGみたいな子はいらないのよ」と言われた

    芸能事務所の社長には「三浦友和のNGみたいな子はいらないのよ」と言われた会員限定記事

  5. 5
    巨人・坂本勇人「一塁手で一軍復帰」に現実味…本人、チームともメリット盛りだくさん

    巨人・坂本勇人「一塁手で一軍復帰」に現実味…本人、チームともメリット盛りだくさん

  1. 6
    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

    一門親方衆が口を揃える大の里の“問題” 「まずは稽古」「そのためにも稽古」「まだまだ足りない稽古」

  2. 7
    女優・沢田雅美さん「渡鬼」降板報道の真相で「本が一冊書けてしまうかな(笑)」

    女優・沢田雅美さん「渡鬼」降板報道の真相で「本が一冊書けてしまうかな(笑)」

  3. 8
    “もうひとつの首都決戦”都議補選「自民」は負け越し必至…「都ファ」は4候補が全員討ち死に危機

    “もうひとつの首都決戦”都議補選「自民」は負け越し必至…「都ファ」は4候補が全員討ち死に危機

  4. 9
    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

    大谷への理不尽な「ボール球」ストライク判定は差別ゆえ…米国人の根底に“猛烈な敵愾心”

  5. 10
    ヒデとロザンナ(6)8歳年上の東洋人にロザンナは「やばい、運命の人だわ」と直感し…

    ヒデとロザンナ(6)8歳年上の東洋人にロザンナは「やばい、運命の人だわ」と直感し…会員限定記事