じつは体質も重要…ピロリ菌の除菌は胃がん予防にどれだけ有効?
ヘリコバクター・ピロリ菌は胃の粘膜に生息している細菌の一種です。子供の頃に井戸水や感染者との接触で感染するとされていて、胃の中の感染が継続すると、胃潰瘍や萎縮性胃炎と呼ばれる胃の粘膜が薄くなるような慢性胃炎の原因となります。この萎縮性胃炎から、胃がんが発生しやすいことが分かっているので、ピロリ菌は胃がんのリスクになると言われているのです。
胃炎や胃潰瘍があってピロリ菌の感染が確認された場合には、ピロリ菌の除菌治療が行われます。抗菌剤や胃薬を1週間程度飲むことで、胃の中のピロリ菌を退治するのです。
問題は特に胃に病気のない人に、ピロリ菌の感染が見つかった時、除菌することが胃がんの予防になるかどうか、ということです。2014年に発表された論文によると、これまで発表されたデータをまとめて解析した結果として、健康な人にピロリ菌の除菌をすると、その後の胃がんのリスクが34%程度低下した、という結果になっていました。今年の米国医師会関連の医学誌に掲載された中国の論文によると、遺伝的ながんのリスクが高い人では、ピロリ菌の除菌で胃がんのリスクは55%低下していましたが、遺伝的なリスクが低い人では、除菌の胃がん予防効果は確認されませんでした。
胃がんは体質によってなりやすい傾向があるので、ピロリ菌の除菌だけで安心、というわけではないようです。