著者のコラム一覧
石原藤樹「北品川藤クリニック」院長

信州大学医学部医学科大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

「ピロリ菌」除菌の効果は胃がんのほかにも影響がある

公開日: 更新日:

「ヘリコバクター・ピロリ菌」は胃の粘膜に生育している細菌です。胃の中は胃酸によって殺菌されているので、細菌が生きていることはないと考えられていたのですが、ピロリ菌はウレアーゼという酵素を産生することで、胃酸を中和する働きを持っているのです。

 ピロリ菌が注目されたのは、この細菌の感染が萎縮性胃炎という胃炎の原因となり、そこから胃がんが発生しやすくなることが明らかになったからです。それ以外にも胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因にもなります。つまり、胃の病気の多くが、ピロリ菌が原因として起こっているのです。

 胃がんや潰瘍のすべてではありませんが、その多くがピロリ菌を除菌することにより、予防されることも明らかとなりました。それ以外にもリンパ腫という血液の病気の一種や、一部の貧血などの原因にピロリ菌がなることも報告されています。

 最近、それ以外に注目されているのが、大腸がんに対するピロリ菌の影響です。今年のがんの専門誌に発表された論文によると、アメリカの退役軍人の疫学データを解析した結果として、ピロリ菌に感染していると大腸がんになるリスクが18%増加していて、ピロリ菌がいるのに除菌をしないと、大腸がんで死亡するリスクが40%も増加することが報告されています。

 ピロリ菌の除菌は、胃の健康だけでなく、全身の健康にとって重要な治療であるようです。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  2. 2

    大阪・関西万博の前売り券が売れないのも当然か?「個人情報規約」の放置が異常すぎる

  3. 3

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  4. 4

    ヤクルト茂木栄五郎 楽天時代、石井監督に「何で俺を使わないんだ!」と腹が立ったことは?

  5. 5

    バンテリンドームの"ホームランテラス"設置決定! 中日野手以上にスカウト陣が大喜びするワケ

  1. 6

    菜々緒&中村アン“稼ぎ頭”2人の明暗…移籍後に出演の「無能の鷹」「おむすび」で賛否

  2. 7

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  3. 8

    ソフトバンク城島健司CBO「CBOってどんな仕事?」「コーディネーターってどんな役割?」

  4. 9

    テレビでは流れないが…埼玉県八潮市陥没事故 74歳ドライバーの日常と素顔と家庭

  5. 10

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ