AIが進化すればするほど人間対人間の医療が見直されるだろう
そうした“AI頼み”ともいえる流れがあっても、臨床上で患者さんに即応できるのは、数多くの実地経験を積んで鍛えられた医師でなければ不可能でしょう。そして、今の若手医師はそういう経験値がない場合がほとんどなので、独自に判断していくのは難しいと言わざるを得ません。
最近の若手医師の多くは、自分自身であれこれ考えて試行錯誤したうえで正しい答えを導き出すのではなく、正しい答えに至るまでの効率のいい方法を人に教えてもらおうとする傾向があります。言ってみれば、AIは“自分で考えなくてもいい機械”です。若手医師とAI、その手段と目的はがっちり一致しているといえますから、AI頼みの医療なんて……と嘆いても流れは止まらないのです。
■総論的に患者の予後を予測できるか
では、AI時代の医師に求められるのはどのような能力なのでしょうか。まずは「総論的に患者さんの予後を予測できる力」が求められます。
患者さんときちんと向き合っている医師は、診察の際に、「明日になれば、何か食べたときにちゃんと味がわかるようになる」とか、「あと1カ月もすればしっかり大きな声が出せるようになりますよ」といったように、これまでの経験をもとにその患者さんがどのくらい回復して、どんな生活が送れるようになるかについてきちんと伝えることができます。