マスク氏も使う「GLP-1ダイエット」驚きの効果と知っておくべきリスク、誰でも瘦せられるって本当?
無理なく理想の体に──。インターネット上には、こんな触れ込みで劇的な体重減少効果を期待できる薬が販売されている。わずか3カ月で15キロのダイエットに成功するケースもあるという。そんなダイエット薬が波紋を広げている。
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画期的な減量効果をもたらす薬は、糖尿病の薬で「GLP-1受容体作動薬」(以下、GLP-1製剤)と呼ばれるグループに属す。商品名は、オゼンピックやリベルサス、ビクトーザなどが知られ、今年4月にはマンジャロも登場。いずれも根本の血糖値を下げる効果に加えて、痩身効果が確認されている。小難しい薬のメカニズムに触れる前に、利用した人の話を紹介しよう。
50代の男性は学生時代はサッカー部で肥満とは無縁だったが、社会人になって運動をしなくなると、少しずつ体重が増え始め、70キロ台前半を行ったり来たり。体重増にともなって中性脂肪値やコレステロール値も上昇。
それでも基準値を少し上回る程度の“イエローカード”だったが、今年10月の健康診断で自分としてのレッドゾーンの80キロを超えてしまった。身長は168センチで顔も体もパンパンに。生活習慣病の数値は基準値を大幅にアップし、医師や看護師に受診を強く勧められたという。
■週1回の注射で月1万5000円ほど
「でも、通院は断りました。健診の前に飲み会で会ったサッカー仲間は、オレと同じように卒業して太っていたのに、痩せて大学時代の体形に戻っていたんです。それで問い詰めたら、『GLP-1ダイエット』を教えてくれた。週に1回、注射を打つだけだというので、『これなら、オレもできる』と思い、健診の医師には『自分で運動して痩せますから、受診はしません』と見えを張ったんですが、正直なところは、彼と同じGLP-1ダイエットです。ネットで見つけた自由診療のクリニックで購入しました。運動はせずに1カ月で5キロ減だから、めっちゃ楽。もう7、8キロ落としたいですね」
男性が使用したのは、「オゼンピック」の中でも、「皮下注2ミリグラム」というタイプで、薬液が入ったペン型の注射器に注射針をつけ、決められた投与量のダイヤルを回して注射する。
「週に1回0.5ミリグラムずつなので、1本2ミリグラムは1カ月分です。薬の調剤料金込みで1本1万5000円ほどですから、ジムの月謝と変わりません。それで、この効果はマジでスゴイ」
減量に苦しんだことがある人なら、この男性の経験談はまゆつばに聞こえるだろう。しかし、決して男性に限った話ではなく、GLP-1製剤を使用して減量をスタートした人の間では、「だれでも痩せられる」「3カ月で15キロ減も楽に可能」などと減量成功者が続出していて、世界的には起業家のイーロン・マスクやタレントのチェルシー・ハンドラーらも使用を公言している。注射のほか、錠剤もある。
医薬情報研究所「エス・アイ・シー」の医薬情報部門責任者の堀美智子氏が言う。
「GLP-1製剤は、欧米では糖尿病の血糖降下薬だけでなく、肥満症の薬としても認可されています。日本では肥満症の認可がないものの、欧米の事例からみて自由診療とはいえ使用した方が痩せる効果は当然、あるでしょう」
欧米でGLP-1製剤が抗肥満薬として認可されているのは、(1)「BMIが30以上で、なおかつ食事と運動で体重を管理する人」または(2)「BMIが27以上で、なおかつ糖尿病や高血圧などの生活習慣病が1つ以上ある人」だ。前述の男性は、80キロを超えた時点で欧米基準のうち(2)をクリアしているが、日本では認可されていないことは付け加えておく。