先達への敬意なし…マラソンの不振はケニアのせいじゃない
日本は90年代から女子マラソンのチャンピオンを世に送り出している。有森裕子、鈴木博美、高橋尚子を育てた小出義雄をはじめ、藤田信之、鈴木従道といった指導者が基礎を築いたが、監督だけで選手は走らず、カギはモチベーションだ。
マラソンのトレーニングは厳しい。人里離れた高地での走り込み、徹底した食事制限による体重管理、父親のように怖い監督……男子と違い、若い種目だった女子マラソンには目標にする選手もない閉塞した世界、そこにモタが現れた。夜明けは91年世界陸上の山下佐知子、92年バルセロナ五輪の有森による銀メダルだが、彼女たちの傍らにはモタがいた。特に小出軍団は同じコロラド州ボルダーを拠点にしたことで身近に目標を見つけ、有森の流れに高橋尚子も続いたのだ。夢や憧れ、目標がなければ、どんな立派なトレーニング論も馬の耳に念仏。いま、日本の女子マラソンがどん底にあるのは“モタ”がいないからだ。
■ホテルの片隅で会費持ち寄り
モタに会う前日、福岡国際マラソンに行った。毎年、この大会に合わせてマラソンのレジェンドが福岡に集まり「金栗四三を偲ぶ会」を開いている。