新型肺炎猛威で五輪危機に頬かぶり 組織委のウサンくささ
検査態勢にも疑問
疑問はもうひとつある。スイスの製薬会社「ロシュ」は中国の武漢市にウイルスの検査ツールを無償提供している。このツールを購入すれば、検査自体は簡易なので日本の検査態勢は大幅に改善されるという報道もある。
それが本当なら、なぜ即座に動かないのだろうか。
「安倍首相は五輪招致のプレゼンテーションで世界が心配する福島原発の汚染水を『アンダーコントロール(管理下に置いている)』と述べた。安全な国であることを強調したかったからです。もしも新型ウイルスの検査を受ける人が増えれば、患者数も比例して増える可能性が高い。五輪を間近に控える国としては、患者数は少ないに越したことはない。これまでの政府の対応を見ていると、そんなことさえ思ってしまう」(前出の津田氏)
■監視役のマスコミが旗振り役に
スポーツジャーナリストの谷口源太郎氏は五輪のリスクを報じないマスコミに関して「当然ですよ」と言って続ける。
「朝日、毎日、読売、日経の日本を代表する大新聞は東京五輪のオフィシャルパートナーです。協賛金は1社あたり15億円といわれている。テレビはNHKと民放でつくるジャパンコンソーシアム(JC)が18年平昌五輪と20年東京五輪で660億円の放映権を払っている。監視役であるべきマスコミが、今は東京五輪を盛り上げなければならない立場にある。彼らにとって新型ウイルスの問題はいい迷惑で、『東京五輪はこんなことが懸念される』なんて報道をすれば、五輪熱気に水を差すことになる。新型ウイルスの感染がこの先も広がれば、参加を危惧する国や選手は増えるでしょう。マスコミは、IOCや組織委員会、政府の方針、対応に目を光らせなければならないのに、まったく機能していない」
さらに続ける。
「福島原発事故による原子力緊急事態宣言は今も解除されていない。そんなことは世界の人は知りません。世界から大勢の人を呼ぶだけでも問題なのに、IOCのバッハ会長はもちろん、組織委員会の森会長や安倍首相も五輪の旗振り役で危機感はない。感染者は増えるばかりの現状を見れば、五輪に参加する選手の健康チェックが必要になるかもしれません。選手村でひとりでも新型ウイルスの感染者が出たら、それこそ大変なことになる。各国の五輪委員会に事前の健康診断を要請したり、来日後のチェックを認めてもらうというケースもあるでしょう。いずれにしても、クルーズ船の隔離策を見てもわかる通り、この国の危機管理は場当たり的。最悪の事態にならないことを祈るばかりです」
これ以上、この国の恥部は見せたくないのだが……。
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