千賀と菅野は国内では別格…来季メジャー挑戦ならお値段は

公開日: 更新日:

 コロナ禍でも海を渡ることができるのか。

 プロ野球では今オフのメジャー挑戦を視野に入れる選手が多い。投手は巨人菅野智之(30)、ソフトバンク千賀滉大(27)に加え、DeNAの山崎康晃(27)、日本ハム有原航平(28)、ロッテ石川歩(32)、野手では日本ハムの西川遥輝(28)。菅野を除く5人が昨オフ、球団にポスティングによるメジャー挑戦を直訴した。

 中でも、かねてメジャーから高い評価を受けているのが、8日にそろって先発した菅野と千賀だ。菅野は中日戦で7回無失点に抑え、開幕10連勝を達成。防御率1・44と絶好調だ。右前腕部の張りなどで出遅れた千賀は、楽天相手に8回無失点、今季6勝目(3敗)をマーク。防御率3・39と昨季(2・79)より数字を落としているが、最速161キロを誇る速球と鋭いフォークは健在だ。

 とはいえ、今年はコロナ禍により、メジャー各球団のスカウティング活動に大きな影響が及んでいる。米メディア関係者が言う。

「日本などのアジア各国におけるスカウティング活動は解禁されましたが、コロナ禍によって春先は活動禁止となり、複数の球団のアジア担当スカウトが一時解雇の憂き目にも遭った。今もなお、現場でのスカウティング活動を極力、自粛すべしと通達している球団もある。ほぼ投球データのみで海外選手を評価する球団もありますが、米国本土のスカウト幹部の視察はもちろん、テレビやネット配信では映らない練習や試合の様子など、現場でのチェックが限られているのが実情です」

■ダル、マエケンの活躍が追い風

 その一方で、ある米球界関係者は「菅野と千賀の2人に関しては、話は別」と、こう続ける。

「2人は2017年のWBCの際に、多くのメジャー球団から高い評価を受けている。準決勝(米国戦)ではドジャースタジアムで登板し、適応力も見せた。2人の投球や性格面などを含め、調査の蓄積もあるし、今季の投球についてはテレビなどの試合中継でフォローできます。千賀に関しては前腕の故障と昨季よりも球の質が若干、落ちているのが気になりますが、靱帯損傷など大きなケガがない限り、評価が落ちることはない。今季は、カブスのダルビッシュ有がリーグトップの7勝1敗、防御率1・44、ツインズの前田健太も4勝1敗、防御率2・77と好調。日本人投手が結果を出していることも、菅野、千賀にとっては追い風です」

メジャーは放映権料だけで350億円

 メジャーは今季、公式戦が60試合に縮小されただけでなく、無観客開催となった。入場料収入がゼロになり、多くの球団が減収になるといわれている。

「メジャーは入場料収入に頼る日本とは違い、大きなダメージを被ることはないでしょう」

 とは、米球界に詳しいスポーツライターの友成那智氏。

「メジャー球団の収入の多くは、テレビなどの放映権料が占めています。MLBはFOX、ESPN、TBSの全国ネットの3局と14~21年の8年契約を結んでおり、年平均で15億ドル(約1600億円。1ドル=106円換算)の放映権料を得ています。さらにインターネット配信のDAZNとは19年から、年平均約106億円の3年契約を結んでいる。2つ合わせて1700億円の放映権料収入を全30球団に均等に分配するため、各球団は黙っていても年間約57億円の収入が得られる。それとは別に各球団はローカル放送局とも契約しており、例えばドジャースは放映権料だけで年間約357億円を得ています」

 今季は試合数が減ることで放映権料は差し引かれ、入場料が球団収入の多くを占めるヤンキースなどの人気球団はマイナスを被るが、前出の友成氏は、「ポストシーズンの出場枠を16球団に拡大することで放映権料を確保。さらに、FOXとは22~28年の7年総額約5500億円、TBSとは7年総額約5000億円といわれる条件で契約を更新した。ESPNの動向はまだわかりませんが、放映権収入は40%ほど増え、各球団は22年からの8年間、今以上の収入が確保される見通しです。今オフ大幅に補強費を削るようなことにはならないでしょう」と指摘する。

■FA市場で先発は不作

 では、菅野と千賀が今オフにメジャー挑戦した場合、どれくらいの条件になりそうか。

「今年のFA市場は優秀な先発投手が少なく、近年にない『売り手市場』になるでしょう。もともと高い評価を受けている菅野と千賀は、投手のFAランキングでトップ10に入る可能性がある。ヤンキースやレッドソックス、エンゼルスといった資金力がある球団が先発投手の補強を検討していることも追い風になるはずです。菅野は昨季、腰痛で一軍登録を3度抹消され、11勝6敗、防御率3・89と不調だったことや、来年32歳を迎える年齢がネックになるとはいえ、それでも4年総額60億円程度の条件になるでしょう。千賀は昨季より成績を落としていますが、27歳と若く、球威のある速球と落差の大きいフォークを兼ね備えている。フォーク投手は野茂英雄や佐々木主浩、田中将大のように成功例が多い。複数球団による競合は必至で、楽天時代の田中(7年総額約168億円)には及ばずとも、大きなケガさえなければ、最大で6年総額100億円規模の好条件を得る可能性があります」(友成氏)

 菅野と千賀はこのオフが、メジャーへ挑戦する絶好のタイミングといえそうだ。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇