シネマの本棚
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10年かけて調べられた風聞の事件を見事に映画化
関東大震災は100年前の天災だが、今回はそれにからんだ人災の話である。 震災から5日後のこと。房総半島を流れる利根川べりの福田村(現在の千葉県野田市)で、通りすがりの行商人の一団が殺害される…
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監督不詳の軍政下の強権政治の実態を暴く問題作
いまや日常生活をこえてプロの映画製作にまで使われるスマホ。特にドキュメンタリーでは生々しい現場映像の多くがスマホでの撮影だ。初代スマホのiPhoneは2007年発売だから実はまだ20年も経ってないが…
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伝説の音楽レーベルのドキュメンタリー
海外の音楽ドキュメンタリーが、近頃ずいぶん公開されるようになった。ミュージシャン個人の音楽や人生の話もさることながら、レコード会社とか映画の劇伴など、音楽産業にまつわるものに見るべきものが多いのが面…
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当節珍しい正統派の続編
ハリウッドの新作映画が“続編だらけ”になったのはいつごろからだろうか。 嚆矢はたぶん「スター・ウォーズ」や「ゴッドファーザー」だが、最近は続編どころか設定だけ共有した「スピンオフ」ものが山と…
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ノーベル賞作家の遺灰を故郷へ運ぶ旅路
映画監督には兄弟で作品製作をするという人たちが珍しくない。監督になりたいという夢は子ども時代に芽生えやすいが、小説と違って映画は単独では難しい。となれば身近な兄弟を同志にする例も多くなるというものだ…
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2人の不眠症の高校生を描く青春物語「君は放課後インソムニア」
新人のころから見てきた映画監督がキャリアを積んでゆくさまは楽しい。 個人技の小説と違って映画製作は集団でやる大仕事。それだけに作品の規模が大きくなると自分の個性を貫くのは難しくなる。独創性あ…
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ユーモアとおおらかさに満ちた「異郷」の作品群
グローバル化による個性喪失が最も進んだ分野は映画じゃないかと思う。中国だろうがインドだろうがもはやハリウッドと代わりばえもせず、多様性など空念仏。つい20年ちょっと前まで、映画祭には「異郷」の作品が…
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“バービー美人”の若妻が白人至上主義結社を組織
ホラー映画が苦手で困っている。昔ならホラーはマイナーでB級だったから、敬遠してもたいして影響はなかった。だが、いまやホラーは主流のジャンル。おまけに世の中は猟奇殺人や陰謀論であふれ返り、それらをこと…
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モンゴルのアダルトショップで堅物女子がアルバイト
映画にとってグローバル化なんてものは百害あって一利なし。だが、ときには例外があるのも世の常だ。今週末封切りのモンゴル映画「セールス・ガールの考現学」はその好例だろう。 モンゴル映画というと日…
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80年代を背景に描く伝説のシューズ誕生の奮闘記
先週末封切りの「AIR/エア」。バスケシューズの「エア・ジョーダン」を開発したナイキの社員たちの実名の奮闘記、というと企業PRみたいだが、冒頭のタイトルバックでおや? と思うことがあった。80年代と…
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タイ生まれ、日本育ちの写真家の半生
同じカメラを使うのでも写真と映画は違う。昔は「岩波写真文庫」でルポを撮り、CMや劇映画のカメラも回した長野重一のような人もいたが、専門分業が進んでから兼業の話はめったに聞かない。 そんななか…
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20年前の冤罪事件を基にした権力と戦った男たちの物語
映画やドラマで見る弁護士ほど国情の違いを感じさせる存在も少ないだろう。先月封切られたアメリカ映画「ワース 命の値段」は9.11同時多発テロの犠牲者の遺族への補償を、政府側の特別管理人として担当した弁…
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半世紀を経て現代に蘇ったドキュメンタリー
昔、W・サスマンというアメリカの歴史学者の本で、映画「イージー・ライダー」に出てくるヘルメットに星条旗が描いてあるのはなぜか、という学術論文らしからぬ一節に驚いたことがある。あの映画は「反体制文化」…
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加害者両親と被害者両親の対話で描く銃乱射事件
演劇と映画は、俳優が物語を演じる点は同じでもほかは大きく違う。舞台劇を映画化すると微妙に違和感があるのもそのせいだ。では、映画でしか表せないものは何か。それを深くまで考えさせるのが今週末封切りの「対…
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国際列車に乗り合わせた最悪な男との旅
欧州大陸で国際列車に乗るのは楽しいが、緊張もする。個室車両で知らない人と同室になると相手次第で旅の様相が一変するからだ。そんな体験を思い出させるのが来月10日に封切り予定の「コンパートメント№6」。…
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古典と大衆向け曲作りを結んだ伊作曲家
今年は新年早々うれしい映画、「モリコーネ 映画が恋した音楽家」が封切られる。 「荒野の用心棒」の口笛、「続・夕陽のガンマン」のコヨーテの遠吠え、「1900年」の民衆叙事、「ニュー・シネマ・パラ…
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孤独な大富豪が旅芸人の女を追って旅に
モノンクルこと「ぼくの伯父さん」。といっても若い世代はきょとんとするかもしれないが、フランスの喜劇俳優・監督ジャック・タチの永遠の名作。しゃれた紅緋色をバックにした有名なポスターは長いこと筆者の仕事…
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リングで戦う音のない世界に生きるヒロイン
ボクシング映画といえばロバート・デ・ニーロ主演の「レイジング・ブル」にせよデニス・クエイドの「ザ・ファイト」にせよ、かつては男同士の話が当たり前だった。 それがいつのころからか、女優主演のボ…
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ダイレクトシネマと呼ばれる記念碑的作品
バスタブのように大柄な車のトランクに商品を詰めこんで、広大な北米大陸を長々とドライブして売り歩く。現代でも巡回セールスマンは米社会で最もありふれた商売だ。 今週末封切りの「セールスマン」はド…
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背景の南部の自然が魅力の映画
アメリカのどこが好きかと聞かれたら南部と答える。人種差別などの悪弊は数知れないが、風土の奥行きという点では他に類をみない。そんな南部の風物にあふれた物語が来週末封切りの「ザリガニの鳴くところ」。日米…