当節珍しい正統派の続編
「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」
ハリウッドの新作映画が“続編だらけ”になったのはいつごろからだろうか。
嚆矢はたぶん「スター・ウォーズ」や「ゴッドファーザー」だが、最近は続編どころか設定だけ共有した「スピンオフ」ものが山と出回って、まるでたこ足配線だ。
実は現在公開中の「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」は、当節珍しい“正統派の続編”である。
「スター・ウォーズ」の脇役で人気の出たハリソン・フォードがスターの座を得たのが「インディ」もの。本来はニュージャージーの少年が遠い西部に憧れた話だから「インディアナ」ジョーンズでないと無意味なのだが、日本ではそんなのお構いなしの冒険活劇としてヒット。それが世界市場に受ける秘訣と気づいたスピルバーグも「アメリカ的想像力」を切り捨てた宝探し路線に転換。これが人気シリーズ化の背景だった。
今回、既に後期高齢者のフォードが息を切らして駆け回り、日本での興行成績は公開3日間で観客動員40万人超、洋画部門で1位と、まあ予想通りだろう。
近年の米映画界は配信事業が主軸の量産体制。ディズニー社もマーベルや「スター・ウォーズ」シリーズを取り込んで何でもありのフードコート状態だが、さすがにルーカスとスピルバーグゆかりの「インディ」だけに昔ながらのデパートの大食堂の味わいを全うしたというところだ。
ところで、スピンオフ映画製作をアメリカでは「フランチャイズ」という。要は現代版プログラムピクチャーだ。その実態について映画産業論の観点から論じた本はあいにく未訳。しかし、同じ著者のダニエル・ハーバート著「ビデオランド」(作品社 3740円)は幸い邦訳がある。レンタルビデオが映画産業と観客の認識にどんな影響を与えたか、実に面白い「レンタルビデオの文化史」である。 <生井英考>