ドライビングゲームにハマった英国青年がル・マン参戦

公開日: 更新日:

「グランツーリスモ」

 いまどきはやらないものの筆頭といえばモータースポーツだろう。バブル期の浅薄なF1人気はともかく、90年代のAT限定免許あたりからクルマ離れが始まり、不況風の中で自動車熱もしぼんだ。

 ところがそれが意外な命脈を保っていた。それどころか夢が現実になった、というのが来週末封切りの「グランツーリスモ」。ゲーマーに大人気のソニー「プレステ」のソフトの話である。

 マニアは「ゲーム」ではなく「ドライビング・シミュレーター」というのだそうだ。これに凝って大学まで中退したイギリスの若者が、クルマ人気の低迷を危惧した日産とソニーの共同企画「GTアカデミー」で本物のレーサーになるというのがあらすじ。そんなバカなと誰しも思うだろうが、なんとこれが実話だ。

 2011年、オンラインの予選を突破してGTアカデミーに入ったヤン・マーデンボローは2年後にル・マン24時間レースに参戦するまでに成長。そのシンデレラボーイ物語を劇映画にしたのである。

 レース映画は意外と難しい。ル・マンならスティーブ・マックイーンの「栄光のル・マン」、F1なら66年公開の「グラン・プリ」がいまなお最高峰だ。だから本作も正直、期待してはいなかった。ところが、である。たかがゲームとバカにされながらもがく若者をアーチー・マデクウィがチャーミングに演じ、老練な元ドライバーのメカニック役デビッド・ハーバーらが支える構図は「あしたのジョー」そっくり。監督のニール・ブロムカンプは持ち前の器用さで“昔ながらの男の子の夢”を映画にしたわけである。

 清武英利著「どんがら トヨタエンジニアの反骨」(講談社 1980円)はマーケット優先主義のトヨタで猛反対された「86」開発陣を描く企業ノンフィクション。こちらも、いい年した男たちが夢に命を燃やす話である。 <生井英考>

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    北乃きいが「まるで別人!」と話題…フジ「ぽかぽか」でみせた貫禄たっぷりの“まん丸”変化

    北乃きいが「まるで別人!」と話題…フジ「ぽかぽか」でみせた貫禄たっぷりの“まん丸”変化

  2. 2
    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 3
    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

    鹿児島・山形屋は経営破綻、宮崎・シーガイアが転売…南九州を襲った2つの衝撃

  4. 4
    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

    (6)「パンツを脱いできなさい」デビュー当時の志穂美悦子に指示したワケ

  5. 5
    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

    ビール業界の有名社長が実践 自宅で缶ビールをおいしく飲む“目から鱗”なルール

  1. 6
    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

    マレーシア「ららぽーと」に地元住民がソッポ…最大の誤算は歴史遺産を甘く見たこと

  2. 7
    静岡県知事選で「4連敗」の目 自民党本部の推薦が“逆効果”、情勢調査で告示後に差が拡大の衝撃

    静岡県知事選で「4連敗」の目 自民党本部の推薦が“逆効果”、情勢調査で告示後に差が拡大の衝撃

  3. 8
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9
    若林志穂vs長渕剛の対立で最も目についたのは「意味不明」「わからない」という感想だった

    若林志穂vs長渕剛の対立で最も目についたのは「意味不明」「わからない」という感想だった

  5. 10
    “絶対に断らない女”山田真貴子元報道官がフジテレビに天下りへ 総務官僚時代に高額接待で猛批判浴びる

    “絶対に断らない女”山田真貴子元報道官がフジテレビに天下りへ 総務官僚時代に高額接待で猛批判浴びる