シネマの本棚
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ヒップホップが人種を超え化学反応し若者文化に
90年代半ばのニューヨークでは、かつて場末の肉市場だった地区が最先端のクラブの点在する流行の一帯になっていた。いまは「ミートパッキング」地区として観光地化しているが、当時は人けのない危険な場所にあっ…
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北陸の旧態依然な地方政治を皮肉に観察
古い友人にメールしたら返信の末尾に「コロナで人生観が一変しました」と一言。いまや決まり文句とはいえ、旧友の横顔を思うと、こめられた感慨の重さが伝わってくるようだった。 それに似た感触を覚える…
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母と娘とをつなぐ喪失と癒やしの物語
人をつなぐ絆の中でも母と娘のそれはとりわけ強い気がする。その深みを描くのが先週末封切りのフランス映画「秘密の森の、その向こう」である。 子役を上手に使った映画は世界中あまたとあるが、本作には…
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ユダヤ人大虐殺のアーカイブドキュメンタリー
ロシアのウクライナ侵攻開始からちょうど7カ月を迎える9月24日に、ウクライナのドキュメンタリー「バビ・ヤール」が封切られる。 同国は第2次大戦中、悪名高い独ソ戦に翻弄されたが、そのさなか3万…
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同じ高級アパートに住む3家族の扉の向こう
いまどきの映画監督には珍しく、イタリアのナンニ・モレッティは堅物である。コメディーの「ローマ法王の休日」でさえ、生真面目でリベラルで、そのぶん悩みも深い。 本人も自覚的で、自作にもしばしば悩…
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妻の素行を疑い、困惑に追い込まれてゆく主人公
決まり文句というのはいわば人生の知恵の産物だろう。たとえば「禍福はあざなえる縄のごとし」。年経た者が生涯をふりかえるとき、誰しも必ずや後悔する。その失意をかろうじて救うのが、この決まり文句なのだ。若…
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反戦帰還兵の夫の死からベトナム戦争の傷痕を探る旅に
今年はベトナム戦争で米軍が正規地上部隊の撤退を始めてからまる50年になる。 撤退完了は翌年、戦争自体はさらに2年続くから、終戦でも停戦でもない。だが、これを機に世論の関心は戦争から急速に離れ…
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物語映画の可能性を切り開いた女性の生涯
昨年から今年にかけて女優・田中絹代の監督作品が各地で特集上映され、「忘れられた映画作家の発見」と話題になった。今週末封切りの「映画はアリスから始まった」はそんな“ジェンダー映画史”の系譜の最初のひと…
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世間になじめない人間の業を描いた「幻の傑作」
どうしても世間になじめない人間がいる。なじめないまま、居心地の悪さをうまく受け流せずに落ちてゆく。今週末封切りの伝説の映画「WANDA/ワンダ」はそういうアメリカの物語である。 伝説というの…
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反プーチンの活動家を追うドキュメンタリー
いまロシア関連のニュースは9割がウクライナ情勢だが、その前に話題だったのが反プーチンの活動家アレクセイ・ナワリヌイの動向。昨年1月、ドイツから投獄覚悟で帰国した際には搭乗機の中も報道陣が同行し、空港…
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マニア垂涎の堂々167分映画ウンチク大全集
マニアックな映画ファンというのは、自分の発見を誰かに語りたくてたまらないというハタ迷惑な人種である。 近ごろやけに多い映画のユーチューバーはこの手だろうが、同じ映画談議でもプロがやるとやっぱ…
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世紀の逆転劇ドレフュス事件を描く
世界中で吹き荒れる人種差別の嵐。共通するのは差別主義者が「危機感」を口にすることだ。“わが国の伝統が異人種に脅かされている”といったアレである。トランプだけじゃない。フランスではルペンが、ハンガリー…
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要所要所のリズムやタメがいい“お仕事ムービー”
通勤電車で奇妙な光景を見かけた。イヤホンをしてスマホをのぞきこむ若いサラリーマン。見れば早送りの映画に見入っているのだ。 字幕があるとはいえ、ちょこまか動く人物の姿に物語もヘッタクレもあるも…
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映画監督カップルの精神的な関係が話の核
ウクライナ報道の嵐で影が薄いが、この4月は「女性活躍推進法」が改正され、中企業にも報告義務が課された。 だが実は制度化が進むと、抑えられていた側の不満の声は逆に高まる。人種問題もそうだが、長…
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過酷な労働環境にひとりの女性が立ち上がる
「今年7月末に閉館」のニュースで大勢の映画ファンが故郷を失うように感じたのが神保町の岩波ホール。その空白を埋めるように最終期のラインアップは佳作ぞろいで、4月16日封切り予定の「メイド・イン・バングラ…
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ハリウッドの配役という華やかな世界の裏側
現代のアメリカ映画は“商品作り”があざとすぎて辟易するが、ひとつだけ感心するのは配役。判で押したような陳腐なストーリーでも、ある役に見合った、それらしい顔かたちや外見の俳優を抜擢する力は、いまもあな…
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記憶喪失の頼りない感覚を描く“奇妙な味の映画”
ちかごろ「記憶」に関わる不思議な映画が目につく。 公開中の作品だと「選ばなかったみち」が若年性認知症で記憶を失う作家の話。先週末には他人の人格や記憶を乗っ取る女の殺し屋を描くSFホラー「ポゼ…
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外国人収容施設での面会を隠し撮り
ふだんは政権批判などしたがらない経済紙に「『残酷日本』鎖国に失望」という見出しがあって驚いた。記事によると、在留資格を得ながらコロナ禍を理由に入国できない留学生や技能実習生らが約37万人いて、このま…
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独身介護士よしこの前にホームレスの男が…
コロナ禍に突入してはや2年。いまも終息の兆しなく、変異株の拡大は爆発的なのに「重症化のリスクは減少」の楽観論だけで規制は半端に緩和される。どうみても社会全体が“緩慢な死”に追いやられているのではない…
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架空の雑誌の編集部が舞台のファンタジー映画
ニッポン人にはどういうわけか、ニューヨークを「コジャレた街」と思ってる向きが多い。ほんとかね。だってトランプを生んだ街ですよ? とはいえ、その手の思い入れはどの国にもある。たとえばアメリカ人…