読書の達人に学ぶ編

公開日: 更新日:

■「〈問い〉の読書術」大澤真幸著

 本を読むとき、漫然と読んでも意味がない。本の内容に合わせた仮説を立てて読むことが必要だ。例えば、大きな社会問題となっている格差社会を取り上げた山田昌弘著「なぜ若者は保守化するのか」では、非正規社員が増え、生活の安定を願う女性と結婚できず、日本の少子化がますます進むことが指摘されている。

 しかし、大澤氏はここでこんな問いを投げかける。〈ときに「勝ち組」でさえも不幸なのはどうしてなのか〉。本質をつかむための読み方を教えてくれる一冊。

(朝日新聞出版 880円+税)

■「戦争よりも本がいい」池内紀著

 古書店には埋もれた名作が潜んでいる。書名は風雅だが、実はおならの文化史である「新編 薫響集」、7代にわたって処刑役を務めた一族を描いた「パリの断頭台」などが紹介されている。

 シニカルで面白いのが川崎洋著「悪態採録控」だ。マイクを切り忘れて筒抜けになったアメリカ大統領の(紙面に載せるのもはばかられるような)悪態、漱石の「坊っちゃん」のタンカなどを採録。川崎は「悪口が我々の生そのものに活力を与えてきた」といい、池内氏も「言葉が下半身を失うと、みるまに衰弱していく」と危惧する。書物の豊かさに触れられる一冊。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  2. 2

    阪神・佐藤輝明にライバル球団は戦々恐々…甲子園でのGG初受賞にこれだけの価値

  3. 3

    FNS歌謡祭“アイドルフェス化”の是非…FRUITS ZIPPER、CANDY TUNE登場も「特別感」はナゼなくなった?

  4. 4

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  5. 5

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  1. 6

    兵庫県・斎藤元彦知事らを待ち受ける検察審の壁…嫌疑不十分で不起訴も「一件落着」にはまだ早い

  2. 7

    カズレーザーは埼玉県立熊谷高校、二階堂ふみは都立八潮高校からそれぞれ同志社と慶応に進学

  3. 8

    日本の刑事裁判では被告人の尊厳が守られていない

  4. 9

    1試合で「勝利」と「セーブ」を同時達成 プロ野球でたった1度きり、永遠に破られない怪記録

  5. 10

    加速する「黒字リストラ」…早期・希望退職6年ぶり高水準、人手不足でも関係なし