読書の達人に学ぶ編
■「〈問い〉の読書術」大澤真幸著
本を読むとき、漫然と読んでも意味がない。本の内容に合わせた仮説を立てて読むことが必要だ。例えば、大きな社会問題となっている格差社会を取り上げた山田昌弘著「なぜ若者は保守化するのか」では、非正規社員が増え、生活の安定を願う女性と結婚できず、日本の少子化がますます進むことが指摘されている。
しかし、大澤氏はここでこんな問いを投げかける。〈ときに「勝ち組」でさえも不幸なのはどうしてなのか〉。本質をつかむための読み方を教えてくれる一冊。
(朝日新聞出版 880円+税)
■「戦争よりも本がいい」池内紀著
古書店には埋もれた名作が潜んでいる。書名は風雅だが、実はおならの文化史である「新編 薫響集」、7代にわたって処刑役を務めた一族を描いた「パリの断頭台」などが紹介されている。
シニカルで面白いのが川崎洋著「悪態採録控」だ。マイクを切り忘れて筒抜けになったアメリカ大統領の(紙面に載せるのもはばかられるような)悪態、漱石の「坊っちゃん」のタンカなどを採録。川崎は「悪口が我々の生そのものに活力を与えてきた」といい、池内氏も「言葉が下半身を失うと、みるまに衰弱していく」と危惧する。書物の豊かさに触れられる一冊。