【年末に読みたい珠玉の時代・歴史小説】「化土記」北原亞以子著
天保14(1843)年、天保の改革推進派の勘定吟味役・栗橋伊織が闇討ちされ落命。老中・水野忠邦が改革の行き詰まりを打破するため、印旛沼の開拓と大名や旗本の領地を召し上げ代替地を与える上知令の準備に取り組んでいる最中の出来事だった。5年前、勘当され浪人となった緑太郎は、弟・伊織の死を知り、屋敷に駆けつける。残された伊織の妻・花重は緑太郎の元いいなずけだった。そんな中、伊織を殺したのは、紀州藩邸に出入りする浪人の「続兵馬」と名指しする投げ文があった。投げ文の主は、甲州郡内地方の一揆を首謀して逃走中に闇討ち現場に遭遇した兵助だった。緑太郎は、伊織を殺した首謀者をおびき出すために、花重らと印旛沼へと向かう。
昨春、急逝した時代小説の名手が残した長編。
(PHP研究所 1800円+税)