著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

素朴な作りの丁寧な仕事

公開日: 更新日:

「僕のご先祖さま―ロベール・クートラス作品集」ロベール・クートラス著

 現代のユトリロともいわれるフランスの画家、ロベール・クートラス(1930~1985)。没後30周年の今年、東京・渋谷、松濤美術館での回顧展に合わせ出版された画集である。

 本書はグアッシュ(画材=後述)による「肖像画」のみで構成。クートラスはそれらを「僕のご先祖さま」と呼び、本書のタイトルにもなっている。

 以下、あとがきから。

「……(中略)……ほんとうの先祖という意味ではありません。……貧しい労働者の環境に育ち……父親が誰かもわからないのですから」「……見覚えた『顔』と思いがけないところで遭遇し……内面に沈殿していって、一連の肖像画になっていったのでは……」「……自分という存在をつくっている大勢の人々を、自分の『ご先祖さま』と呼んでいたのかもしれません」

 こうした作家のプライベートな「裏話」もまた、作品に劣らず魅力的だ。ページをめくれば人間と動物の「顔の記憶」が、穏やかで内省的な色彩・筆致で描かれている。サイズは、260×378ミリ。64ページでうち8ページは、ほぼA4と一回り小さい。中綴じ製本。たこ糸風の太い糸により、ノドに穿たれた3カ所の穴を縫うように綴じてある。温かみのある素朴な作りの、丁寧な仕事。カバーは天地が9センチ短く印象的。店頭効果も高い。カバーの下にのぞく表紙は、赤みの強い焦げ茶1色刷り(今日流行の、短いカバー/帯+表紙の「様式」については別の機会の宿題に)。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が戦々恐々…有能スコアラーがひっそり中日に移籍していた!頭脳&膨大なデータが丸ごと流出

  2. 2

    【箱根駅伝】なぜ青学大は連覇を果たし、本命の国学院は負けたのか…水面下で起きていた大誤算

  3. 3

    フジテレビの内部告発者? Xに突如現れ姿を消した「バットマンビギンズ」の生々しい投稿の中身

  4. 4

    フジテレビで常態化していた女子アナ“上納”接待…プロデューサーによるホステス扱いは日常茶飯事

  5. 5

    中居正広はテレビ界でも浮いていた?「松本人志×霜月るな」のような“応援団”不在の深刻度

  1. 6

    中居正広「女性トラブル」フジは編成幹部の“上納”即否定の初動ミス…新告発、株主激怒の絶体絶命

  2. 7

    佐々木朗希にメジャーを確約しない最終候補3球団の「魂胆」…フルに起用する必要はどこにもない

  3. 8

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  4. 9

    フジテレビ「社内特別調査チーム」設置を緊急会見で説明か…“座長”は港社長という衝撃情報も

  5. 10

    中居正広「女性トラブル」に爆笑問題・太田光が“火に油”…フジは幹部のアテンド否定も被害女性は怒り心頭