ベンツと最新印刷技術との「出合い」
「なぜ、メルセデス・ベンツは選ばれるのか?」上野金太郎著
漆器の装飾技法のひとつに「蒔絵」がある。漆器の表面に漆で絵柄を描き、乾かぬうちに金粉や銀粉を「蒔く」。漆が乾いたところで金銀の粉を払うと、絵柄が浮かび上がる。
本書のカバーは、アルミ箔と見まがうばかりの金属光沢が印象的だ。そしてカバーの下半分を覆う「腰高の帯」は、ビジネス書でもすっかり定着した感がある。その帯に隠れるカバーのタイトル文字は白色。著者名や肩書はスミ文字でクッキリ。通常、銀色の紙に白インキやスミを刷っただけでは、ここまで文字が映えることはない。首をかしげながら、早速ルーペ片手に調べてみる。
まず驚くのは「箔」とおぼしき光沢部分がアミ点に「分解」されていること。濃度は70%ほど。ぎらつく光沢を抑え、さらにスミ版40%のアミ点が重なる。銀面を暗く沈めることで高級感や凄みを演出、何よりタイトル=白文字を引き立てる。ちなみにこの白文字部分は銀とスミアミに対して白抜き、つまり紙白が見えている状態。心憎い計算だ。
ところで、金属光沢といえば洋酒、たばこ、化粧品、菓子の「パッケージ」。仕事として関わることは少ないものの、日常生活を見渡すと、従来の「箔押し」以外の表面加工技術が、そこかしこに使われ始めているらしい。