グレーの本文に“毒”が冴える
「レジナルド(サキ・コレクション)」サキ著
梅雨まっただ中、ふと見上げれば灰色の雲が頭上一面を覆う。加えて拙宅は「大規模修繕工事」中、建物全体がスクリーン状の布で包まれ、昼間でさえ黄昏時のような、薄暗い自室にて本稿を書いている。
19~20世紀初頭に活躍した英国の小説家、サキ。毒のある風刺の効いた短編の名手。本書は架空の人物「レジナルド」を主人公とした作品を編んだ第1短編集である。
反骨・批判精神にあふれた作家サキ本人に負けず劣らず、登場人物レジナルドも一筋縄ではいかない、ひねくれ者だ。そんな2人に向けて、造本上どんな趣向がこらされているのか眺めてみよう。
四六変型判。通常より天地が5ミリ短い。たった「5ミリ」のおかげで、ずいぶんポータブルな印象を受ける。製本は通常の上製だが、表紙の芯ボールを大胆に薄くしてある。フランス装に通じる洒脱さ。華奢かつ軽快な仕上がりだ。
極め付きは「グレー」の本文用紙。本書のトータル・イメージを決定づけているといってもいいだろう。銘柄はMagプレーン、四六判、Y目、110キロ。本来は書籍本文用ではない。さらにいえば次の理由から、書籍関係で使うにはキビシイ紙。雑誌古紙を使った再生紙ゆえ、ロット(抄造時期)による色の差が出る/経年により「ヤケ」る/印刷時、「紙ムケ」しやすく大きなベタ面は避けるベシ。