裏返る「大問題」
「ビッグクエスチョンズ 哲学」サイモン・ブラックバーン編著、山邉昭則・下野葉月訳
「哲学」の2文字が店頭でひときわ目立つ。本書のほか「物理」「宇宙」「数学」「倫理」がある。人類を悩ませてきた「大問題」に専門家が答える翻訳もののシリーズだ。
通常のカバーとはだいぶ勝手が違う。原著の意匠を踏襲した、ペーパーバック風の洒落た表紙。その上に透明なフィルムが掛かる。このしなやかさはPP(ポリプロピレン)製か。透明度が高く表紙と重なり一枚の紙のようだが、冒頭の「哲学」の文字も帯と見まがうスミベタも、日本語の文言はすべてこのフィルムに刷られている。UVスクリーン印刷か、インキの被膜も十分、さらに「フィルム裏面」に印刷されているので、輸送中や店頭での摩擦対策も十分だろう。
さて、透明フィルムの「裏」に文字や絵柄を刷る場合、表裏を逆にして印刷することになる。表裏が逆になっている状態を俗に「裏焼き」と呼ぶ。印刷に関わる仕事をしている者としては「事故」を連想させ、あまり聞きたくない言葉。アナログ製版の時代、人為的ミスで裏焼き=事故が発生したケースなど数えればキリがない。
ところで、「裏表がある」人物は疎んじられるのが世の常だが、こと印刷・版画に関しては避けられない問題だ。図工で習う木版画や印鑑はウラ返しに彫ってある。原理上、原版を紙に「直接転写」する方式の場合、原画と印影(刷り上がり)は「鏡像関係」にある。サラリと「鏡像」と書いてしまった。