素朴な作りの丁寧な仕事
さて「グアッシュ」とは上等な「不透明水彩絵の具」。小学校で使う絵の具のプロ仕様版。混色するほど濁る。鮮やかに描くには下地の乾燥を待って塗り重ねる。本書の作品には濁った(彩度の低い)色面が多い。大方が、グレーと茶色+差し色(鮮やかな朱、青、緑……)の構成。製版や印刷的に「色の刷り分け」が難しい罪作りな原稿だ。しかも白地とおぼしき部分に、シアン・マゼンタ・イエローの2~3%の網点が見える。3色掛け合わせの青みがかった淡い灰色。これも印刷時、「色のコロビ」を許さないシビアな設計だ。
時に、こうした繊細な色面は、原画の色調に合わせ、紙の白さを抑える効果はもちろんのこと、「パリの曇天」へのオマージュと見立てるのだが、さて。(エクリ 3500円+税)
▽みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。90年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。