「食堂のおばちゃん」山口恵以子著
10年前、夫を失った二三は、勤めていたデパートを辞め、姑の一子とともに、亡夫が佃で営んでいた洋食屋を、昼は定食、夜は居酒屋となる食堂に変えて引き継いだ。その「はじめ食堂」に3カ月ほど前から全身を高級ブランドで固めた男が、夕食を食べに足しげく通ってくるようになった。また、毎火曜の昼間には、店に不釣り合いなモデルのような女が現れる。やがて二三と一子はテレビで、ブランド男が有名なIT企業の社長・藤代だと知る。そんなある夜、いつものように藤代が二三の店で夕食を取っていると、いつもは昼にしかこない火曜日の女が血相を変え飛び込んできた。(「三丁目のカレー」)
自らもかつて社員食堂で働いていた著者がつづる下町人情連作小説。(角川春樹事務所 1300円+税)