“月並み”じゃない「月の満ち欠け」
「月とこよみの本」林完次著
秋風に たなびく雲の 絶え間より 漏れ出づる月の 影のさやけさ
(百人一首/左京大夫顕輔)
身近な天体だというのに、月に関して知らないことが多い。月初の「一日」を「ついたち」と読むのも「月」の振る舞い(「月立ち」)が語源だと、本書を通して知った。太陽暦の今日でも、月の名残はまだまだ消えないようだ。プロフィルによれば「写真家、天文作家。(……)星や月などの天体を地上の風景とともに写した叙情的な作品で独自の世界観を築く」とある。本書もその例に漏れず、著者自身による美しい月の写真をふんだんに使い、科学と文化・芸術の両面から「月とこよみ」の関係を解き明かす。
全3章構成。1章は「月の基礎知識」。「こよみと旧暦」「月の誕生秘話」「月のプロフィール」などを平易に解説。「29日と12時間44分で地球を一巡りする」こと、英語monthが月の満ち欠けの「1サイクル」が起源であることなど、豆知識が効いている。
2章「月の満ち欠け」は本書の中核をなす。1日目「新月」から30日目「三十日月」のうち、16の月齢を選び「呼称」を解説。三日月、上弦の月、十六夜、立待月、下弦の月、有明月……。また、「球体である月が均一な明るさで輝く理由」など、随所のエピソードが好奇心をかき立てる。各月4ページ立て。うち1ページは月の写真を目いっぱい大きくレイアウト。淡いモノトーンから濃いオレンジ色まで、月光の「色の多彩さ」に今更ながら驚く。最後の1ページは太陽、地球、月の位置関係を図解。その夜、月がなぜそういう姿に見えるのか、一目瞭然だ。