著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

本の散策を容易にする“新発明”

公開日: 更新日:

「蔡國強 帰去来」蔡國強著

 蔡國強。2008年、北京オリンピック開会式でビジュアルディレクターを務める。「ビッグフット」の鮮烈な映像を覚えている読者も多いだろう。1957年、中国福建省生まれ。中国4大発明のひとつ「火薬」を用い、紙やキャンバスにイメージを定着させる大胆な手法で脚光を浴びる。

 本書は日本国内では7年ぶりとなる個展(横浜美術館で開催)の公式カタログである。「出品作の紹介」「火薬絵画の制作ドキュメント」「蔡自身による自伝『99の物語』の日本語訳」の3部構成。本編に先立つ導入の3つ見開きには、作品の部分カットとともに、谷川俊太郎氏の詩の引用がレイアウトされている。蔡氏のビジョンを詩句に映し取りながらの穏やかな滑り出し。絶妙な構成だ。

 タイトル「帰去来」は中国の詩人、陶淵明作「帰去来辞」より。芸術活動の原点である日本への「里帰り」、「火薬ドローイング」の再認識、加えて精神の自由、自然との融合など、実存的な「原点回帰」の意味も重ね合わせている。

 A4サイズより一回り大きいハードカバー。角背、グロスPP加工あり。作品の「クローズアップ」写真が表紙全体を覆う。迫力と細部の共存。作家のネームバリューに見合う、押し出しの強さも十分だ。本文、全ページカラー。和文書体に「本明朝」を使用。90%ほどの長体(縦長に変形すること)が施されている。文字量を稼ぐためではないだろう。明朝体同様、中国に起源をもつ「宋朝体」の縦長フォルムへのオマージュではないかと想像する。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    火野正平さんが別れても不倫相手に恨まれなかったワケ 口説かれた女優が筆者に語った“納得の言動”

  2. 2

    中日1位・高橋宏斗 白米敷き詰めた2リットルタッパー弁当

  3. 3

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  4. 4

    八村塁が突然の監督&バスケ協会批判「爆弾発言」の真意…ホーバスHCとは以前から不仲説も

  5. 5

    眞子さん渡米から4年目で小室圭さんと“電撃里帰り”濃厚? 弟・悠仁さまの成年式出席で懸念されること

  1. 6

    悠仁さま「学校選抜型推薦」合格発表は早ければ12月に…本命は東大か筑波大か、それとも?

  2. 7

    【独占告白】火野正平さんと不倫同棲6年 元祖バラドル小鹿みきさんが振り返る「11股伝説と女ったらしの極意」

  3. 8

    「天皇になられる方。誰かが注意しないと…」の声も出る悠仁さまの近況

  4. 9

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  5. 10

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議