箱の設計に“王道”なし
「箱の設計」ポール・ジャクソン著、
「完璧な展開図が導く、美しく力強い箱のデザイン」。魅力的な帯のコピーとシンプルなタイトルに引かれページをめくると、およそ1枚の紙から作られた箱とは思えない「作品」が並ぶ。著者は米国、ドイツ他50以上の大学で教壇に立つ傍ら、ナイキ、シーメンス等の企業で「折りのコンサルタント」として技術指導を行っている。
本書掲載の作例の展開図はダウンロード可能。だが、本書はいわゆる「型紙集」ではない。もちろん型紙を切り抜いて作るだけでもOK。だが、それだけではもったいない。もう少し踏み込んでみよう。本書は著者がいうように「何を“デザイン”するかではなく、あなたがデザインしたものを“どのように作るか”を教えている」。つまり、あなたのオリジナルの「1点もの」の箱を、展開図=「複製可能な設計図」として書き起こすための教科書なのだ。でも、大量生産するつもりがなければ、設計図などいらないのでは? と思いきや、さにあらず。展開図を起こす過程で「壊れやすい」など構造上の弱点や矛盾を排除できるのだ。
さて第1部では、紙を切る/折るには、手術用の使い捨てメスが向いていること、展開図は、まず定規やコンパスなどで「手」で製図すること、用紙は厚さが250グラム/㎡のマット紙が良いなど、細かい指示がある。続く第2部は「完璧な展開図のデザイン」。本書の随所で堂々と「完璧」と謳っているのは、正しく美しいやり方を「構造的パッケージングの体系」としてまとめ、実践してきた実績があればこそ。