迫りくる磁極逆転で甚大な被害
地球は巨大な磁石であり、北極にS極、南極にN極があって強い磁場をつくっている。小学生でも知っている“地球の常識”だが、このS極とN極が入れ替わるときが迫っているのだという。
アランナ・ミッチェル著、熊谷玲美訳「地磁気の逆転」(光文社 2500円+税)では、磁場はどんな役割を果たしているのか、そして磁極の逆転が起きると地球と私たちにどんな影響があるのかを明らかにしている。
地球の磁場は、地球の中心核で生み出されている。中心核は高温だが固体の金属でできている内核と、その周囲を液体の金属で取り巻く外核からなっている。中心核は数十億年にわたって熱を外へ逃がそうと対流を起こしており、この対流が電流を発生させ、地球の磁場を生み出している。
ところが、地球内部に何らかの変化が起こることで、磁場が乱れて磁極の逆転が起こることがある。実は地球の歴史の中で、それは20万~30万年に1度のサイクルで起きてきた。そして今、最後の逆転から78万年が経過しており、いつ起きてもおかしくない状態にある。
問題は、逆転現象が始まってから落ち着くまでの間、磁場が通常の10分の1まで弱まってしまうことだ。通常、地球を取り巻く磁場は宇宙線と呼ばれる高エネルギーの放射線などをブロックしてくれている。しかし、磁場が弱まると宇宙線被曝(ひばく)による被害が避けられなくなり、あらゆる電子機器や発電・送電設備は故障。アメリカ経済が1日に被る損失は415億ドルに上るという試算もある。そればかりか生体の遺伝子へも影響を及ぼし、計り知れない健康被害が発生する可能性もあるのだ。
迫りくる地球の危機の真実。決して映画の世界の話ではない。