「人間」又吉直樹著

公開日: 更新日:

「人間」又吉直樹著

 主人公の永山が、美術の専門学校に通っていた学生時代を回想するところから物語は始まる。当時漫画家になりたかった永山は、美術系の学生が住んでいる「ハウス」と呼ばれる共同住宅に住むようになり、そこで出会った芸術家の卵たちの競争心や自意識にさらされながら暮らしていた。

 そんなある日、仲間内で開いた作品展に永山が出した「凡人A」という連作の絵に興味を持った編集者から作品を別の形にして書籍化してはどうかといわれて承諾する。だが、いざ創作しようとすると筆が進まず、鬱屈とするばかり。

 ところが、創作を応援してくれた女の部屋でやけ酒を飲んで寝てしまった翌日、永山は女から酔った自分が口走ったという物語のメモを見せられたことをきっかけに、一気に物語をまとめ上げる。本が刊行されると、思った以上の評判に嫉妬や臆測などの反響が起こり、さらに予想外の出来事が待っていた……。

 本書は、2018年9月から翌年5月まで毎日新聞に連載された小説に加筆修正を加えて単行本化したもの。何者かになろうとしてもがく表現者の葛藤を、真正面から赤裸々に描いている。

(毎日新聞出版 1400円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇