「罪と祈り」貫井徳郎著
元警官の濱中辰司が隅田川で死体となって発見された。当初は事故と思われたが、側頭部に殴られた痕があり他殺の線が浮上する。息子の亮輔が知る辰司は、正義感が強く実直な警官であり、人から恨まれるようなことはなかった。では、なぜ殺されたのか。
一方、亮輔の親友で辰司に憧れて刑事になった芦原賢剛は、偶然にも辰司の事件を担当することになり、2人それぞれに辰司の死の真相を探っていく。
亮輔は、以前の辰司は明るかったが、昭和から平成に変わった頃、賢剛の父で親友だった智士が自殺してから性格が一変したことを知る。加えて辰司が、その自殺の少し前に起きたある女性が育児放棄で子供を死なせた事件と、身代金を受け取ったまま逃げおおせた誘拐事件に関する記事をスクラップしていたこともわかる。自殺、育児放棄、誘拐、この3つの事件と辰司の死は、どう関係しているのか?
現在の亮輔と賢剛、過去の辰司と智士という2組の友情を交互に配しながら、事件の背後に横たわる時代との葛藤と悲哀を描いた長編ミステリー。
(実業之日本社 1700円+税)