「罪と祈り」貫井徳郎著

公開日: 更新日:

 元警官の濱中辰司が隅田川で死体となって発見された。当初は事故と思われたが、側頭部に殴られた痕があり他殺の線が浮上する。息子の亮輔が知る辰司は、正義感が強く実直な警官であり、人から恨まれるようなことはなかった。では、なぜ殺されたのか。

 一方、亮輔の親友で辰司に憧れて刑事になった芦原賢剛は、偶然にも辰司の事件を担当することになり、2人それぞれに辰司の死の真相を探っていく。

 亮輔は、以前の辰司は明るかったが、昭和から平成に変わった頃、賢剛の父で親友だった智士が自殺してから性格が一変したことを知る。加えて辰司が、その自殺の少し前に起きたある女性が育児放棄で子供を死なせた事件と、身代金を受け取ったまま逃げおおせた誘拐事件に関する記事をスクラップしていたこともわかる。自殺、育児放棄、誘拐、この3つの事件と辰司の死は、どう関係しているのか?

 現在の亮輔と賢剛、過去の辰司と智士という2組の友情を交互に配しながら、事件の背後に横たわる時代との葛藤と悲哀を描いた長編ミステリー。

(実業之日本社 1700円+税)

【連載】ベストセラー読みどころ

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “3悪人”呼ばわりされた佐々木恭子アナは第三者委調査で名誉回復? フジテレビ「新たな爆弾」とは

  2. 2

    フジテレビ問題でヒアリングを拒否したタレントU氏の行動…局員B氏、中居正広氏と調査報告書に頻出

  3. 3

    菊間千乃氏はフジテレビ会見の翌日、2度も番組欠席のナゼ…第三者委調査でOB・OGアナも窮地

  4. 4

    中居正広氏「性暴力認定」でも擁護するファンの倒錯…「アイドル依存」「推し活」の恐怖

  5. 5

    大河ドラマ「べらぼう」の制作現場に密着したNHK「100カメ」の舞台裏

  1. 6

    フジ調査報告書でカンニング竹山、三浦瑠麗らはメンツ丸潰れ…文春「誤報」キャンペーンに弁明は?

  2. 7

    フジテレビ“元社長候補”B氏が中居正広氏を引退、日枝久氏&港浩一氏を退任に追い込んだ皮肉

  3. 8

    下半身醜聞ラッシュの最中に山下美夢有が「不可解な国内大会欠場」 …周囲ザワつく噂の真偽

  4. 9

    フジテレビ第三者委の調査報告会見で流れガラリ! 中居正広氏は今や「変態でヤバい奴」呼ばわり

  5. 10

    トランプ関税への無策に「本気の姿勢を見せろ!」高市早苗氏が石破政権に“啖呵”を切った裏事情