「百舌落とし」逢坂剛著
引退した大物政治家・茂田井が、首筋に千枚通しを突き立てられて絶命している姿で発見された。しかも被害者の茂田井が撮影した写真には、何者かによって飛べないようにテグスで足を縛られた上、まぶたを縫い合わされた野鳥の百舌の姿が写っており、被害者の上下のまぶたも同じように縫い合わされていたのだ。その残忍な手口から、かつて武器輸出と政権の癒着を巡って関係者が次々と不審な死を遂げた伝説の殺し屋「百舌」による犯行が疑われた。一連の事件は、まだ続いていたのか。危機感にかられるこれまで捜査に関わってきた警視庁の倉木美希と私立探偵の大杉良太は、身の危険を感じながらその核心に迫っていくのだが……。
本作は、「百舌の叫ぶ夜」から「墓標なき街」まで30年以上続いてきた同シリーズの待望の完結編。表題「百舌落とし」とは、飛べない百舌をおとりにして、寄ってきた他の鳥をつかまえる手法のこと。茂田井の殺害は次の殺害のおとりではないかという疑心暗鬼のなかで行われる、正体不明の殺し屋・百舌と捜査班の攻防がスリリング。黒幕との対決シーンまで一気に読ませる。
(集英社 2000円+税)