「最新の国際基準で見わける雲の図鑑」岩槻秀明著
空はとても身近な自然であり、美しく、表情も豊かだ。夏の入道雲や秋のうろこ雲など、雲によって季節を感じたりもする。
雲の分類には、世界気象機関が発行する「国際雲図帳」という万国共通の指針が存在する。
その最新版の国際雲図帳に基づいた雲の図鑑。
すべての雲は巻雲・巻積雲・巻層雲・高積雲・高層雲・乱層雲・層積雲・層雲・積雲・積乱雲の10種に集約でき、日本では十種雲形と呼ばれている。
高は高度2000~7000メートルの中層に発生する雲、巻は形がすじ・繊維状になっている雲、積はもくもくと上にのびていく雲、層は水平にベタッと広がる雲、そして乱は雨や雪を降らせる雲と、名前に使われている高・巻・積・層・乱の5つの漢字の組み合わせが雲の性質を端的に表している。
国際雲図帳の分類では、まず十種雲形のどれに当てはまるかを決め、その上で見た目の形に注目した「種」、雲の並びや厚さに注目した「変種」、部分的な特徴に注目した「補足雲形」、そして本体の雲に付属する小雲を記した「付属雲」の4カテゴリーで「細分類」される。
例えば、入道雲は、積雲の種のひとつ「雄大雲」や、積乱雲の種のひとつ「無毛雲」の別名で、雄大雲は発達して雷を伴うようになると積雲から積乱雲に名前が変わる。
またいわし雲やさば雲ともいわれるうろこ雲は、巻積雲で、低気圧や前線が近づいているときに見られる雲なのだとか。
そうしたお馴染みの雲からケルビン-ヘルムホルツ波(KH波)という風の波が可視化された層積雲の補足雲形「KH波雲」や、そこから派生する「猫の目雲」などのめったに見られない雲まで。雲にはじまり気象や空の光の現象まで情報が満載だ。
コロナ禍でしばし疎遠だった空を久しぶりに見上げ、雲を眺めてみよう。
(日本文芸社 1980円)