「絶滅危惧動作図鑑」藪本晶子著
写真撮影をはじめ、調べものや送金、読書など、スマホが1台あれば何でも事足りる時代。随分と便利になったものだ。
新しい道具や生活習慣の登場とともに、人の動作も変化する。100年後、モノや道具は資料として残っているかもしれないが、それを使っていた人の動作は忘れられているかもしれない。
そんな時代とともに消えていくであろう「動作」を集めたイラスト図鑑。
平成生まれの著者を基準に、「絶滅危惧レベル」順に並ぶ。まずは「井戸水をくむ」「薪を割る」「洗濯板で洗う」などの「やったことがない 日常生活で見たこともない動作」を紹介。
さらに「切符を切る」や「体温計を振る」「ちり紙を揉む」などの動作が続くが、このあたりは昭和生まれなら、きっと誰もが体験しているだろう。
平成生まれには、全くチンプンカンプンだろうが、改めて「絶滅危惧動作」と命名されたこれらの動作のイラストを眺めていると、駅員が乗客の切符を切る合間に鳴らしていたはさみのリズムが響く改札口や、検温のたびに水銀式の体温計を振っていた懐かしい光景が思い出されてくる。
続く「ちいさい頃に何度かやったことがある動作」の章では、「黒電話をかける」をはじめ、「テレビをたたく」「ギョウ虫検査」など、これまた「そうだった!」と思わず手のひらに拳をポンと打ち付けるような(収録はされていないが、たぶんこれも絶滅危惧動作)気分。
以降、「携帯電話の電波を探す」など「かつてはやったけど、今はやらない 生活の中であまり見なくなった動作」から、「鍵を閉める」など「今は普通にやっているけど、今後なくなってもおかしくない動作」まで、100種類の動作をシンプルなイラストと解説で紹介。着眼点に脱帽の面白図鑑だ。
(祥伝社 1100円)