「浮世絵でみる!動物図鑑」中右瑛監修
「浮世絵でみる!動物図鑑」中右瑛監修
日本人は昔から動物が大好き。現在のパンダブームのように、150年以上も前の江戸時代にも珍獣ブームが起きたという。舶来したゾウやラクダ、ヒョウをひと目見ようと、見せ物小屋には人びとが押し寄せたそうだ。
ネットはおろか、ラジオもテレビもない時代、江戸っ子たちの情報源は浮世絵だった。浮世絵に描かれた猛獣、珍獣の中には、写実というよりは奇抜な姿で描かれているものもあり、これが幕末に珍獣浮世絵ブームを起こしたという。
もちろん、金魚や猫、狆(ちん=日本原産犬)の江戸3大ペットをはじめ、庶民の暮らしに浸透した動物たちは数多い。
本書は、そうした動物たちが登場する浮世絵ばかりを集めたアート本。
まずはその江戸3大ペットが登場する作品から。
歌川国貞(3代目豊国)が天保年間に描いた「人形を抱く娘と猫」は、飼い猫が娘の着物の模様の蝶を本物と思ったらしく捕まえようと飛びついた姿を描く。飛びかかられた娘の表情や、つけられた首輪と鈴などから、猫が可愛がられていることがよく分かる。
歌川国芳の「初雪の戯遊」は、雪の積もった庭で殿中女中たちが人の背丈以上もある大きい雪だるまならぬ「雪猫」を作っている姿が描かれる。
浮世絵から、インコやオウムなど西洋の鳥も庶民生活に根付いていたことが分かる。
ほかにも、猿回しのサルやウシ、ウマ、そして軍馬など、人間のパートナーとして働く動物たちや、妖狐や八畳敷といわれる巨大な陰嚢をもつ狸、鵺(ぬえ)など空想の動物たちが登場する浮世絵、そして冒頭で紹介した舶来の珍獣たちを描いた作品や葛飾北斎の動物浮世絵まで、160点以上を収録。
現代人と変わらない、ご先祖と動物とのほほ笑ましい関係に心が和む。
(パイインターナショナル 2640円)