「イラストでひもとく仏像のフシギ」田中ひろみ著
「イラストでひもとく仏像のフシギ」田中ひろみ著
日本人にはなじみ深い仏像だが、一口に仏像と言ってもその種類は多種多様。人間と同じようにそれぞれに個性がある。
そんな仏像の魅力にハマったイラストレーターが、知れば知るほどに不思議な仏像の世界を案内してくれるイラストブック。
仏像の元来のモデルは、お釈迦様だが、今では仏教に関する像をまとめて仏像と呼び、大まかに如来・菩薩・明王・天の4つに分類。さらに高僧や神像などのグループがあり、合わせて5分類とするのが一般的だそうだ。
「如来」は最上位の仏像。初めは悟りを開いたお釈迦様を表す「釈迦如来」だけだったが、仏教の広まりとともに教えが多様化し、密教の最高位・大日如来などさまざまな如来が考え出された。
一方、「菩薩」のモデルは如来になる前の王子だったお釈迦様。故に如来(大日如来を除き)が質素な衣をまとっただけのシンプルな姿なのに対し、菩薩は髪を高く結い上げ、冠をかぶり、アクセサリーを身に着けたきらびやかな姿をしている。
密教で考え出された「明王」は、大日如来の指令で怖い顔をして人々を仏道に導く仏様。
そして「天」は、古代インドの神様が仏教に取り入れられて、仏法を守護する「護法善神」となったもので、本来の仏像にはない女性神などさまざまな姿で表される。
こうした基本に始まり、十一面観音のそれぞれの顔や、千手観音が手に持つ各法具、仏像の心の声だという「印相」(手指の形)などの意味まで、日本各地の名だたる仏像をモデルにしたイラストとともに解説。
中には、古仏としては奈良の秋篠寺の1体しか確認されていないという「伎芸天像」などのレアキャラ仏を紹介する章などもあり、知っているのに知らない世界の扉を開いてくれる面白本。
(小学館 1760円)