「世界の美しい甲冑解剖図鑑」ドナルド・J・ラロッカ著 瀧下哉代訳

公開日: 更新日:

「世界の美しい甲冑解剖図鑑」ドナルド・J・ラロッカ著 瀧下哉代訳

 西洋の甲冑(アーマー)の歴史は古く、4000年以上も前から作られてきたという。戦国武将が鎧兜の意匠にこだわったように、甲冑には装身具としての役割もあった。

 甲冑を身にまとった中世の騎士の姿は、日本人にもおなじみだが、本物の甲冑は、人々が抱いているイメージよりもはるかに複雑で、独創的で、魅力にあふれているという。

 本書は、アメリカのメトロポリタン美術館が誇る世界最高レベルのコレクションを紹介しながら西洋甲冑の概要を解説してくれる豪華な図鑑。

 14世紀初めまでのおよそ1500年間、ヨーロッパで広く普及していた鎧は、「メイル」や「チェーンメイル」と呼ばれる鎖帷子(くさりかたびら)だった。

 やがて硬化処理を施した革などのプレートで鎖鎧を補強して、腕や脚を保護する方法が用いられるようになり、プレートも鋼製に変化。それがコート・オブ・プレート(プレート製の上着)を経て、14世紀後半に北イタリアで、腕鎧や脚鎧をはじめ、胸当てと背当てからなる鋼製のキュイラスと呼ばれる胴鎧に兜を加え、全身を防御するプレート・アーマー(板金鎧)が誕生する。

 プレート・アーマーは、16世紀中ごろまでに様式美においても機能的完成度においても頂点を極めた。しかし、火器の登場によって17世紀末には戦場から姿を消す。

 そうした歴史から、頭部を覆う兜から、足の甲からつま先までを覆う鉄靴まで、プレート・アーマーを構成するさまざまな要素の一つ一つの仕組みや機能も解説。

 フランス王アンリ2世や神聖ローマ皇帝フェルディナンド1世など、歴史上の人物たちが身につけたぜいを尽くした甲冑など、収録された写真を見ているだけで、中世に紛れ込んだような気分にさせてくれる。

(エクスナレッジ 2860円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇