著者のコラム一覧
金井真紀文筆家・イラストレーター

テレビ番組の構成作家、酒場のママ見習いなどを経て2015年から文筆家・イラストレーター。著書に「世界はフムフムで満ちている」「パリのすてきなおじさん」「日本に住んでる世界のひと」など。

「イタリア女子が沼ったジワる日本語」テシ・リッゾーリ著

公開日: 更新日:

「イタリア女子が沼ったジワる日本語」テシ・リッゾーリ著

「お疲れ様という日本語は、やばいっす」と笑ったのは日本語が堪能なエストニア人だった。「疲れ」に「お」と「様」を付けるなんてすごい、と感じるらしい。カリブ海に浮かぶ島国バルバドス出身で、やはり完璧な日本語を話す女性は言った。「わたしが好きな日本語は『暖かかった』です。暖かいの過去形。タタカカっていう音が好き」。えー、そこ!?

 中にいると当たり前すぎて気にも留めないことを、外から来た人は「発見」する。わたしは古今東西のそういうエピソードが大好き。とりわけ、このややこしい言語(日本語)が外からどう発見されるのかについては興味津々だ。だからこの本は刊行前から楽しみにしていた。イタリア出身で6カ国語を操る語学の天才が、日本語に「沼った」というのだから、絶対におもしろいはず、と。

 果たして、著者のテシさんの琴線に引っかかる日本語はどれも「そうきたかー」「さすが!」とうなるものばかりだった。たとえば江戸時代の刑場「土壇場」と英語の「キャンセル」が合体した語「ドタキャン」。駅のアナウンスに頻出する「駆け込み乗車」というフレーズ。さらには芋の「煮っ転がし」。いずれも指摘されると俄然ヘンテコな、味わい深いことばに見えてくる。

 そして本書のもうひとつの読みどころは、若い女性であるテシさんが日本各地にドカドカと出かけ、ヒッチハイクをし、銭湯を堪能し、ゲストハウスのおばちゃんと仲良くなっていくディープな旅の顛末だ。おもしろい発見は、好奇心をもって行動してこそ得られる、という大事な真理を思い出させてくれる。

(亜紀書房 1870円)

【連載】金井真紀の本でフムフム…世界旅

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    無教養キムタクまたも露呈…ラジオで「故・西田敏行さんは虹の橋を渡った」と発言し物議

  2. 2

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 3

    吉川ひなのだけじゃない! カネ、洗脳…芸能界“毒親”伝説

  4. 4

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  5. 5

    竹内結子さん急死 ロケ現場で訃報を聞いたキムタクの慟哭

  1. 6

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 7

    木村拓哉"失言3連発"で「地上波から消滅」危機…スポンサーがヒヤヒヤする危なっかしい言動

  3. 8

    Rソックス3A上沢直之に巨人が食いつく…本人はメジャー挑戦続行を明言せず

  4. 9

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 10

    立花孝志氏『家から出てこいよ』演説にソックリと指摘…大阪市長時代の橋下徹氏「TM演説」の中身と顛末