旧来の銀座にはなかったタイプの顧客まで「姫」にはやって来た。スポーツ選手である。特にプロ野球選手は有り余るだけの金を持ってはいたが、無粋な彼らに銀座のハードルは高く、相変わらず新宿や赤坂の安い店で飲んでいた。それが「若くてとびきりの美人がいる」「気軽に飲める」という噂を聞きつけ、こぞって「姫」に現れるようになった。洋子も新顔の彼らを面白がりことさらに歓待した。「姫」は銀座の常識を変えたのだ。
ボクシング界から飛び出し、キックボクシングという新たな競技を立ち上げた野口修と同様、山口洋子は旧態依然とした夜の銀座を変えた革命児だったのである。(つづく)