銀座の高級クラブ「姫」のマダム・山口洋子の“多面多才”
1980~90年代にかけてリーグ優勝13回、日本一8回と黄金時代を迎えたプロ野球・西武ライオンズ。所沢の西武球場(現・メットライフドーム)で日本一を決めると、選手やスタッフはまず恒例のビールかけがプリンスホテルで盛大に行われた。その後、2次会に繰り出す。行き先は銀座である。エースの東尾修を団長に、田淵幸一、山崎裕之、大田卓司、永射保、松沼兄弟……。主だった面々が高級クラブに到着すると、ライオンズの法被を着たママがホステスを揃え、準備万端整えて出迎えてくれるのだ。
「いい? 今夜は倒れたら負けのデスマッチだからね!」
ママの号令で狂宴は始まる。本来この店は午前1時閉店なのだが、ライオンズが日本一になった日は特別に貸し切り、朝まで……昼すぎまで飲み明かす年もあった。当然、ママも一緒に飲むかというと、そうではない。ママが飲んでいるのは炭酸水である。実は下戸なのだ。酔って騒いでいるふりをしながら、実は店内の様子を注視し、ポーターに何くれとなく指示を出している。彼女こそ銀座のクラブ「姫」のオーナーマダム・山口洋子である。「西武ライオンズ私設応援団長」を自任する彼女は、ライオンズが栄冠を手にするたびに、その姿をメディアにさらけ出していた。