横山剣インタビュー「『樹影』は再スタート、“シン・クレイジーケンバンド”の気持ちです」
メンバーの努力が実り“ついにアタリが来た!”という気分
“東洋一のサウンド・マシーン”クレイジーケンバンドの22枚目のアルバム「樹影」がリリースされた。バンドの本拠地は横浜。本牧のレストラン「イタリアンガーデン」で結成され、メンバーの多くが横浜在住だ。
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──「樹影」のリズムは重く、グルーブもカッコイイです。
僕はいつもアルバムの収録曲の倍くらい新曲ができちゃいます。でも、数年前にちょっと煮詰まっちゃいましてね。曲作りを休みました。それで、かねてやりたかったカバー集をリリースしました。コロナ禍だったので、近所のカラオケ店で一人カラオケで練習しました。「樹影」は再スタートというか、今はやりのカタカナの“シン”をつけた“シン・クレイジーケンバンド”の気持ちです。ドラムスもベースも、いいでしょ。フェンダーのジャズベースに代えて、演奏のラインがわかりやすくなりました。ギターもキーボードも、楽器の音が全部抜けてきました。メンバーの努力が実り“ついにアタリが来た!”という気分です。コーラスのAyeshaも4年目で、バンドになじんできました。
──作曲にParkというクレジットがあります。
Park君は以前から手伝ってくれていたベーシスト、アレンジャーで、今回は、かなり濃く参加してくれています。僕の頭の中で鳴ってもうまく音にできないもどかしさが、ずっとありましてね。わかりますか? トイレでしゃがんで、うんちが出そうでなかなか出ない。あんな感覚です。それがPark君によって解消されました。彼が僕の中の音を具現化してくれるんです。それで、メンバーとの音のコミュニケーションがかなりよくなりましたね。
──クレイジーケンバンドの音には、やはり横浜の香りがあります。
曲の多くが本牧で生まれているからでしょうね。本牧の磁場が音に刷り込まれているんじゃないかな。でも、レコーディングは東京のスタジオです。ちょっとプラシーボ効果もあるんでしょうね。グランドキャニオンへ行ったときに、お土産屋さんで「Grand Canyon」というロゴの描かれた鹿の貯金箱を買ったんですよ。これはアメリカンだ! と感じましてね。ところが、日本に帰ってからよく見ると、「Made in JAPAN」って書かれていました。あれに近い気がします。僕たちは“Sound of Yokohama Yokosuka”とうたっていますが、録音は実は東京です。
■年をとってもカッコよくいられる秘訣とは?
──ところで、剣さんはいつもとてもおしゃれです。最近はシルエットもすっきりしましたね。
週に一度、加圧トレーニングを始めました。確かに頬はすっきりしましたが、腹をもう少しへこませたいんですよ。何がいけないかは自分でわかっています。加圧の後スタバへ行って、コーヒーフラペチーノにシロップをたっぷり入れて飲んでしまうんです。
──お腹もまったく目立ちませんが。
意識的に胸は鍛えています。胸が大きくなると、バランス的に腹がへこんだように見えるんですよ。
──なるほど。ほかに、60代になってもずっとカッコよくいられるポイントがあれば、教えていただけますか。
うまくいっているかはわかりませんが、自分がカッコいいと感じている人の真似をしています。
──どなたですか?
勝新太郎さん、矢沢永吉さん、山下達郎さん、谷原章介さんです。
──4人の方はまったくタイプが違いますね。
はい。まったく違う4人と自分が混ざると、それが個性になる、という狙いです。勝新太郎さんが、真似ると学ぶを合わせてよく“まねぶ”と言っていましたが、真似ているうちにそれが本物になるのではないか、とね。楽曲のカバーもそうでしょ。ほかのシンガーの持ち歌でも、歌い続けていると自分のオリジナルに近づいていきます。
──いかがですか、うまくいっていますか?
まだわかりません。でも、4人の方になり切るようにしています。横浜に、本牧山頂公園という、海と工業地帯と高速道路が見下ろせる丘があるんですよ。そこで僕はつぶやいています。オレもついにここまで上り詰めたか、と。実際には上り詰めていませんが、そこは、なり切ります。
(取材・文=神舘和典)