キャデラックEVは売れるのか? 予想以上にガチな電動SUV「リリック」が初上陸
キャデラック リリック(車両価格:¥11,000,000/税込み~)
正直ニッポンでバッテリーEVがさほど売れない今、意外なるラグジュアリーブランドが本気の普及戦略を打ち出してきた。先日、伝統のアメリカンブランド、キャデラックが都内で発表した初本格BEVのリリックである。
車両価格は1100万円で、全長×全幅×全高は4995×1985×1640mm。言わばテスラのモデルSやモデルXの中間ぐらいのラージサイズSUVのEVだ。
果たしてリリックのどこが本気なのか? って分かりやすいのは、キャデラックとして実に12年ぶりの右ハンドル車であることと、日本の急速充電規格のチャデモ対応であること。今まで大型SUVを好んで入れてきた同ブランドだが、そのほとんどが左ハンドル。日本のツウなアメ車ファンもそちらの方を好む傾向にあった。
しかしリリックは違う。キャデラック要する北米GM(ゼネラルモーターズ)は、今後の電気化を睨み、本気でEVを普及させたいのと、実はGMはASEANやオーストラリアなどの右ハンドル国にも強い。北米でもリリックが売れていると同時に、今回も日本と同じくしてオーストラリアとニュージーランドにも導入予定で、より本気でグローバルな電動化を図っているのだ。
フォルムはドイツプレミアム車とはかなり違う
とはいえそんなに簡単な話ではなく、日本でのGMの登録台数は去年500台弱。しかも前述のテスラモデルSとXにしろ、今春での日本市場撤退を表明。モデルの古さもあるが、このラージEVの売りにくさも思わせる。
オマケに24年の国内四輪市場におけるバッテリーEVシェアは1%台と、23年の2%台より微妙に減っている。そんな中、リリックはどう闘おうというのか。
実は朗報もある。24年の全体シェアは落ちたが、プレミアムセグメントに置けるBEV比率は7%前後と伸びている。ラインナップ的にベンツEQEやEQS、BMWi5などの高級EVが増えており、リッチマン向けは売れているのだ。
そこに向けて「アメリカンラグジュアリーなEVの世界」を提案するのがリリックの真の狙いだ。
事実、全長約5m×全幅約2mの伸びやかフォルムはドイツプレミアムのそれとはかなり違う。フロントマスクは極細の縦長LEDヘッドライトと水平基調スワイピングLEDウインカーで、アメ車らしいモダンさを強調。中央には半透明グリルの「キャデラッククレスト」を装備。
リアにも1967年式エルドラドをオマージュしたLEDコンビランプを採用。モダンでありつつクラシカルさもある。
性能やサイズを考えると1100万円は決して高くない
インテリアも、動物素材を使わない合成皮革のインタラックスや移ろいゆく光演出の「KOMOREBI」(こもれび)を設定。同時に、湾曲型の9K対応33インチアドバンスドカラーLEDデジタルメーターを装備。一見、これみよがしなサイズ感はないが、実に見やすくモダンなデジタル環境を提供。アメリカンラグジュアリーブランド、キャデラックのモダンな世界観を濃密に反映しているのだ。
走りに関しても、GM自慢の95.7kWhの大容量アルティウムバッテリーを搭載し、ピークパワー&トルク522ps&610Nmを発揮。WLTPモードの航続距離は510km。ラゲッジスペースも793ℓと広い。
正直、テスラなどと比べてさほどアドバンテージはないが、その分、独自のアメリカンラグジュアリーデザインと圧倒的な静粛性と快適性で勝負する。
残念ながら試乗はこれからだが、キャビンのフロント&サイドは二重ガラスで、リアは5mm厚の強化ガラス。さらに車内マイクを使って雑音を消す次世代型アクティブノイズキャンセレーションも搭載。いろいろ性能やサイズを考えると1100万円は決して高くない。
かつてないラグジュアリー感で勝負する新型EVキャデラック リリック。どれだけ欧州BEVプレミアム市場に食い込めるかが見ものである。
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