著者のコラム一覧
小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

キャデラックEVは売れるのか? 予想以上にガチな電動SUV「リリック」が初上陸

公開日: 更新日:

キャデラック リリック(車両価格:¥11,000,000/税込み~)

 正直ニッポンでバッテリーEVがさほど売れない今、意外なるラグジュアリーブランドが本気の普及戦略を打ち出してきた。先日、伝統のアメリカンブランド、キャデラックが都内で発表した初本格BEVのリリックである。

 車両価格は1100万円で、全長×全幅×全高は4995×1985×1640mm。言わばテスラのモデルSやモデルXの中間ぐらいのラージサイズSUVのEVだ。

 果たしてリリックのどこが本気なのか? って分かりやすいのは、キャデラックとして実に12年ぶりの右ハンドル車であることと、日本の急速充電規格のチャデモ対応であること。今まで大型SUVを好んで入れてきた同ブランドだが、そのほとんどが左ハンドル。日本のツウなアメ車ファンもそちらの方を好む傾向にあった。

 しかしリリックは違う。キャデラック要する北米GM(ゼネラルモーターズ)は、今後の電気化を睨み、本気でEVを普及させたいのと、実はGMはASEANやオーストラリアなどの右ハンドル国にも強い。北米でもリリックが売れていると同時に、今回も日本と同じくしてオーストラリアとニュージーランドにも導入予定で、より本気でグローバルな電動化を図っているのだ。

フォルムはドイツプレミアム車とはかなり違う

 とはいえそんなに簡単な話ではなく、日本でのGMの登録台数は去年500台弱。しかも前述のテスラモデルSとXにしろ、今春での日本市場撤退を表明。モデルの古さもあるが、このラージEVの売りにくさも思わせる。

 オマケに24年の国内四輪市場におけるバッテリーEVシェアは1%台と、23年の2%台より微妙に減っている。そんな中、リリックはどう闘おうというのか。

 実は朗報もある。24年の全体シェアは落ちたが、プレミアムセグメントに置けるBEV比率は7%前後と伸びている。ラインナップ的にベンツEQEやEQS、BMWi5などの高級EVが増えており、リッチマン向けは売れているのだ。

 そこに向けて「アメリカンラグジュアリーなEVの世界」を提案するのがリリックの真の狙いだ。

 事実、全長約5m×全幅約2mの伸びやかフォルムはドイツプレミアムのそれとはかなり違う。フロントマスクは極細の縦長LEDヘッドライトと水平基調スワイピングLEDウインカーで、アメ車らしいモダンさを強調。中央には半透明グリルの「キャデラッククレスト」を装備。

 リアにも1967年式エルドラドをオマージュしたLEDコンビランプを採用。モダンでありつつクラシカルさもある。

性能やサイズを考えると1100万円は決して高くない

 インテリアも、動物素材を使わない合成皮革のインタラックスや移ろいゆく光演出の「KOMOREBI」(こもれび)を設定。同時に、湾曲型の9K対応33インチアドバンスドカラーLEDデジタルメーターを装備。一見、これみよがしなサイズ感はないが、実に見やすくモダンなデジタル環境を提供。アメリカンラグジュアリーブランド、キャデラックのモダンな世界観を濃密に反映しているのだ。

 走りに関しても、GM自慢の95.7kWhの大容量アルティウムバッテリーを搭載し、ピークパワー&トルク522ps&610Nmを発揮。WLTPモードの航続距離は510km。ラゲッジスペースも793ℓと広い。

 正直、テスラなどと比べてさほどアドバンテージはないが、その分、独自のアメリカンラグジュアリーデザインと圧倒的な静粛性と快適性で勝負する。

 残念ながら試乗はこれからだが、キャビンのフロント&サイドは二重ガラスで、リアは5mm厚の強化ガラス。さらに車内マイクを使って雑音を消す次世代型アクティブノイズキャンセレーションも搭載。いろいろ性能やサイズを考えると1100万円は決して高くない。

 かつてないラグジュアリー感で勝負する新型EVキャデラック リリック。どれだけ欧州BEVプレミアム市場に食い込めるかが見ものである。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • トピックスのアクセスランキング

  1. 1

    大阪万博会場の“爆発”リスクはやっぱりヤバい…高濃度メタンガス問題に国や府は安全強調も、識者が疑問符

  2. 2

    大阪万博は開幕直前でも課題山積なのに危機感ゼロ!「赤字は心配ない」豪語に漂う超楽観主義

  3. 3

    「いきなり!ステーキ」倒産危機から一転…黒字転換&株主優待復活でも“不透明感”漂うナゼ

  4. 4

    入場まで2時間待ち!大阪万博テストランを視察した地元市議が惨状訴える…協会はメディア取材認めず

  5. 5

    農相が備蓄米の追加放出表明も「中小の米屋には回って来ない」…廃業ラッシュで地域の安定供給が滞る恐れ

  1. 6

    トランプ関税「交渉役」に大抜擢…石破首相の腹心こと赤沢亮正経済再生相の“ホントの実力”

  2. 7

    トランプ大統領「日本でアメ車が売れない」ボヤきのデジャビュ…非課税障壁でっち上げ“市場開放”要求のお門違い

  3. 8

    「へグセス疑惑」再燃…「有事では日本が前線に」発言の国防長官が危険視される理由

  4. 9

    大阪万博を追いかけるジャーナリストが一刀両断「アホな連中が仕切るからおかしなことになっている」

  5. 10

    大阪万博の目玉 344億円の巨大木造リングはほぼフィンランド産…「日本の森林再生のため」の嘘っぱち

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    広末涼子が危険運転や看護師暴行に及んだ背景か…交通費5万円ケチった経済状況、鳥羽周作氏と破局説も

  2. 2

    広末涼子容疑者「きもちくしてくれて」不倫騒動から2年弱の逮捕劇…前夫が懸念していた“心が壊れるとき”

  3. 3

    佐藤健は9年越しの“不倫示談”バラされトバッチリ…広末涼子所属事務所の完全否定から一転

  4. 4

    今思えばゾッとする。僕は下調べせずPL学園に入学し、激しく後悔…寮生活は想像を絶した

  5. 5

    露呈された韓国芸能界の闇…“兵糧攻め”にあうNewJeansはアカウントを「mhdhh」に変更して徹底抗戦

  1. 6

    大阪万博ハプニング相次ぎ波乱の幕開け…帰宅困難者14万人の阿鼻叫喚、「並ばない」は看板倒れに

  2. 7

    大阪・関西万博“裏の見どころ”を公開!要注意の「激ヤバスポット」5選

  3. 8

    フジテレビ問題「有力な番組出演者」の石橋貴明が実名報道されて「U氏」は伏せたままの不条理

  4. 9

    広末涼子が逮捕以前に映画主演オファーを断っていたワケ

  5. 10

    中居正広氏は元フジテレビ女性アナへの“性暴力”で引退…元TOKIO山口達也氏「何もしないなら帰れ」との違い