がんそっくり? 認知症発症メカニズムの輪郭が見えてきた
Aβが一定以上たまると、異常な構造を持ったタウタンパク質が隣の正常タウを異常なものに変える働きが活発となり、異常なタウが海馬から大脳皮質に向け伝染する。
「本来、タウタンパクは神経細胞の骨格をつくり、柔軟性がある。しかし、異常なタウはβシートと呼ばれるものをつくることで柔軟性を失い、タウ同士でくっつきやすくなる。その結果、大きなゴミの塊をつくり、神経細胞を壊し、それが神経細胞を伝うようにして脳内に広がるのです」
しかし、過剰に蓄積したAβやタウ、壊れた神経細胞は本来、脳内の神経免疫担当細胞であるミクログリアにより貪食され、処理される。
「脳内の神経細胞は、その他の全身の細胞と違って再生することはほぼない。そのため、ミクログリアは早期に、正確に問題のある神経細胞を処理します。それができるのは、壊れた神経細胞が“私を食べて”という意味の“イート・ミー”シグナルを出すからです。ところがその数が多くなるとミクログリアが混乱し、異常か正常か関係なく片っ端から神経細胞を貪食する。その結果、神経細胞の消失に拍車がかかり、記憶をはじめとした脳の機能が一気に失われてしまうのです」