がんそっくり? 認知症発症メカニズムの輪郭が見えてきた
異常な細胞が、正常な細胞を仲間にしてどんどん広がっていく。しかも、本来は監視役である免疫細胞をも味方につけてしまう。これは増殖と転移を繰り返すがん細胞にそっくりではないか?
「実際、アルツハイマー病を『タンパクがん』と呼ぶ研究者もいます」
ちなみに、Aβは“ゴミ”と呼ばれているが、本当か。
「Aβは、Aβ前駆体と呼ばれる大きなタンパクから切り出されます。前駆体は脳神経物質の輸送に関わっていますが、Aβはなぜ切り出されるのか、機能は何か、わかっていません。細胞の外に排出されるから必要のないゴミだろうと推測されているにすぎません」
しかし、生命の設計図であるDNAも実際に機能しているのはわずか2%で、98%はゴミといわれてきた。
ところが最近は、多くの働きがあることがわかっている。Aβも完全に取り除くと、脳に問題が起きないとも限らない。
■個人レベルでリスクの判別が可能に
人の名前を忘れたり、固有名詞が出なくなることは、多くの中高年が経験すること。「それはアルツハイマー病とは無関係」という医療関係者もいるが、亡くなった人の脳内のAβやタウの蓄積量と、認知機能を比べた研究では、アルツハイマー病を発症していない健康な人でも両者に相関関係があったという。