ブタの力でヒトの腎臓を作る 再生医療技術はここまできた
後は、そのネフロン前駆細胞を注入した腎原基(凍結保存できる)を腹腔鏡手術で、患者の後腹膜に移植する。4週間ほどで腎原基に血管が侵入して発育が継続し、尿が作られるようになったら再度、腹腔鏡手術で尿管とつないで排尿できるようにするという。
「腎原基は4週間で30グラムほどに育ちます。人の腎臓の5分の1ですが、腎臓は10%くらい機能していれば生きられます。腎原基を1~2個移植することになると思います」
ただし、この腎臓再生医療の研究開発は始動したばかりで、すぐに人に応用できるわけではない。マウスやラットでは成功したが、大きな動物では何が機能して、何が機能しないか、最初はサルなどを使って慎重に研究を進めていくという。
「iPS細胞を用いた再生医療は、細胞やシートは何とか作れますが、3次元の臓器を作れるようになるまではかなり時間がかかるでしょう。それまでに臓器発生のプログラムが働く環境を動物から借りるという手があります。生物の神秘を利用するのです」
胎生臓器ニッチ法による人での腎臓再生が実現すれば、将来的には他の臓器に応用できる可能性があるという。