統計学の「有意水準5%」はどのように決められているのか
統計学的検定という客観的な方法について説明してきましたが、実は少し怪しいところもあります。一般に統計学的に有意な差かどうかを決める基準として、「有意水準5%未満」が用いられますが、この5%の基準はどのように決められているのでしょうか。5%、20回に1回未満の偶然の間違いは認めようというのですから、かなりアバウトな感じがします。厳しい基準なのか、緩い基準なのか、感じるところは人それぞれで、主観的な感じがあります。
しかし、この主観的な感じというのは正しい感覚で、意外なことにこの5%という数字は伝統的に用いられてきたにすぎず、科学的なバックグラウンドがありません。主観的な基準と言っていいものです。最近では実際に5%という有意水準は緩すぎるので、1%にまで厳しくした方がいいという意見もあります。10年後には、統計学的な有意差は有意水準1%で判断されるようになっているかもしれません。
単に有意水準5%で統計学的に有意な差といっても、その危険率によって実体には大きな差があります。危険率0・049と0・001では実際には大きな差があります。しかし、どちらも同じように「統計学的に有意」といわれるので注意が必要です。ぎりぎり有意差ありというのは、20回に1回の偶然の差かもしれないからです。
もちろん国民健康・栄養調査で示された喫煙率の減少は、男女とも有意水準1%どころか、さらに厳しい有意水準でも有意な減少という結果に変わりありませんから、統計学的にはかなり強固な結果といえます。