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名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

統計額の「危険率」の小ささは研究規模に大きく左右される

公開日: 更新日:

 少し間が開きましたが、前回危険率0.049と0.001では同じ有意差ありでもずいぶん違うということを書きましたが、もう少し説明が必要です。

 ここでずいぶん違うのは偶然の可能性であって、差の大きさの違いではないということです。国民健康・栄養調査での10年前と今の喫煙率の差は、偶然である可能性はきわめて低いのですが、男性の10%という喫煙率の減少の大きさの意味を示しているわけではないのです。

 架空の別の研究を考えてみましょう。30万人を調査して、10年前と比較して40%の喫煙率が37%まで減少したという結果です。この時の危険率を計算してみると、小数点以下155桁です。実際の調査の男性での危険率の小数点18桁と比べてはるかに小さくなっています。しかし、減少の割合は3%減少したにすぎません。国民健康・栄養調査の10%より減少の大きさが小さいにもかかわらず、危険率ははるかに小さいのです。

 なぜこんなことが起こるのでしょう。これは研究の規模が関係しています。国民健康・栄養調査は約3000人の対象で喫煙率を調査しています。これに対して100倍の30万人で調査すると、喫煙率の減少が3%と小さくても、危険率は研究規模が30万人と大きいために、さらに小さい値になります。

 危険率の小ささは、実際の差の大きさではなく、研究規模に大きく左右されます。つまり、研究規模をどんどん大きくしていけば喫煙率が1%減少しただけでも統計学的に有意な減少と言えるわけです。このことは検定統計で判断するときに最も重要なポイントの一つです。

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