大腸がん<6>1次治療の病勢コントロール率は70%
最新の治療ガイドラインには、切除不能進行再発大腸がんに使える薬として十数種類が連なっています。そのうち6種類は分子標的薬、ひとつが免疫チェックポイント阻害剤です。
1次治療だけでも13通りの処方がありますが、ガイドラインには治療方針を決めるためのフローチャートが載っています。これを参考に、患者と主治医が相談して、どれを選ぶか決めることになります。ただし「RAS」と「BRAF」という、2種類の遺伝子に異常があると、いくつかの分子標的薬が効かないため、事前の遺伝子検査が欠かせません。2次治療は、1次治療で使わなかった処方の中から選択されます。1次治療として並んでいる処方の多くは、同じ程度の奏効率(30%前後)を発揮します。だから1次治療が効かなかった(効かなくなった)としても、違う処方が効くかもしれないわけです。
ところで奏効率とはどんな数字でしょうか。30%といわれると、患者の3割が助かるかのように聞こえますが、決してそうではありません。
薬が効いて、腫瘍がCTなどの画像に写らなくなった状態を「完全寛解」といいます。また腫瘍の長径・短径の合計が、治療前の3分の1以下に縮小すれば「部分寛解」といわれます。腫瘍を球形と仮定すると、半径が3分の1以下(体積にして27分の1以下)になった状態です。そして治療を受けた患者のうち、完全寛解もしくは部分寛解に至った患者の割合を奏効率と呼ぶのです。完全寛解に至る患者はごく少数ですから、実際には「奏効率≒部分寛解率」となります。奏効率30%とは、治療を受ける患者の30%が部分寛解を得られるという意味です。