「安らかな死」のための薬の効果 米国医師会雑誌で臨床報告
高齢者社会においては、死は身近な問題です。避けられない死を安らかに迎えたいというのは、年齢を重ねれば誰でも考えることかもしれません。自然な死の前には、呼吸の力が低下して、空気の通り道である気道に痰が絡まり、ゴロゴロという音を立てることがあります。これは死の数日以内に起こる変化で、「死前喘鳴」と呼ばれています。
こうした状態になった時には、本人は意識がないことが多いので、苦しさは感じていないかもしれないのですが、それを見ている家族や知り合いにとっては、その状態はとても苦しそうで、見ていてつらいものです。この症状を緩和する方法はないのでしょうか?
海外で広く使用されているのが、抗コリン剤と呼ばれる痰を減らすような作用のある薬です。ただ、その効果については、これまであまり科学的な検証がされていませんでした。今年の米国医師会雑誌に、オランダでの臨床試験の結果が報告されています。162人のホスピスに入った患者さんをくじ引きで2つに分けて、その一方に抗コリン剤のブチルスコポラミン臭化物という薬を注射で使用したところ、死前喘鳴が明確に低下する効果が認められたのです。この薬は日本でも腹痛などで使われている一般的なものです。
安楽死は議論のあるところですが、安らかな死のための薬というのは、今後日本でも議論されるようになるかもしれません。