著者のコラム一覧
石原藤樹「北品川藤クリニック」院長

信州大学医学部医学科大学院卒。同大学医学部老年内科(内分泌内科)助手を経て、心療内科、小児科研修を経て、1998年より「六号通り診療所」所長を務めた。日本プライマリ・ケア学会会員。日本医師会認定産業医・同認定スポーツ医。糖尿病協会療養指導医。

「安らかな死」のための薬の効果 米国医師会雑誌で臨床報告

公開日: 更新日:

 高齢者社会においては、死は身近な問題です。避けられない死を安らかに迎えたいというのは、年齢を重ねれば誰でも考えることかもしれません。自然な死の前には、呼吸の力が低下して、空気の通り道である気道に痰が絡まり、ゴロゴロという音を立てることがあります。これは死の数日以内に起こる変化で、「死前喘鳴」と呼ばれています。

 こうした状態になった時には、本人は意識がないことが多いので、苦しさは感じていないかもしれないのですが、それを見ている家族や知り合いにとっては、その状態はとても苦しそうで、見ていてつらいものです。この症状を緩和する方法はないのでしょうか? 

 海外で広く使用されているのが、抗コリン剤と呼ばれる痰を減らすような作用のある薬です。ただ、その効果については、これまであまり科学的な検証がされていませんでした。今年の米国医師会雑誌に、オランダでの臨床試験の結果が報告されています。162人のホスピスに入った患者さんをくじ引きで2つに分けて、その一方に抗コリン剤のブチルスコポラミン臭化物という薬を注射で使用したところ、死前喘鳴が明確に低下する効果が認められたのです。この薬は日本でも腹痛などで使われている一般的なものです。

 安楽死は議論のあるところですが、安らかな死のための薬というのは、今後日本でも議論されるようになるかもしれません。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ