コロナによる受診や手術控えは心臓に何をもたらしているのか
実際、3カ月ごとに診ていた患者が新型コロナによる受診控えで半年、1年来院せず、受診したときにはかなり進行していた例が散見されたという。
「僧帽弁閉鎖不全症等で経過を見ていた患者さんは半年で心房細動など不整脈が慢性化し、弁逆流も高度になっていました。早く手術をしていれば不整脈は予防できたのにと悔やまれました」
心臓は4つの部屋に分かれていて、全身から戻ってきた炭酸ガスを多く含んだ静脈血は右心房、右心室を通じて肺に運ばれる。そこで炭酸ガスを新鮮な酸素と交換し、左心房から左心室へと流れていく。そして、酸素をたっぷり含んだ血液は左心室の強い収縮力により大動脈を介して全身に運ばれる。このとき、血液が逆流しないように各部屋の出口には心臓弁があり、タイミングよく開閉することで血液の流れをスムーズにしている。この弁が正常に機能しなくなる状態が弁膜症だ。
「僧帽弁は、左心房と左心室の間にある弁です。弁膜症のひとつである僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁逆流症とも呼ばれ、僧帽弁がうまく閉じなくなることで心臓が収縮するたびに左心室から左心房へと血液が逆流し、心臓に余計な圧がかかったり、肺に血液がたまったりする病気です。強い息切れや呼吸困難、疲れやすさ、不整脈、動悸などの自覚症状が出る場合もありますが、血液の逆流が軽度の場合は自覚症状がなく、その間に症状が進行することがあるのです」