著者のコラム一覧
堀田秀吾明治大学教授、言語学者

1968年生まれ。言語学や法学に加え、社会心理学、脳科学の分野にも明るく、多角的な研究を展開。著書に「図解ストレス解消大全」(SBクリエイティブ)など。

頭の良い人は他人を信じやすく、そうでない人は他人を信用しない

公開日: 更新日:

 関連性理論という「理論」、あるいは「学説」があります。

 人は、言葉を聞いたとき、最小限の労力で、最大限の意味を理解する傾向が強いといいます。自分の持っている知識や言葉を、(相手の)発した文脈や状況などに勝手に関連付けてしまう。たとえば、オレオレ詐欺は最たる例で、「オレ」という最小限の言葉で、受け手は最大限の意味(=息子など)を解釈してしまうのです。

 また、オレオレ詐欺では、「○○法律事務所の××」とか、「新宿遺失物預かりの△△」などの言葉を巧みに利用し、相手を信じ込ませます。これら「法律事務所」「遺失物預かり」などの言葉も、まさに最小限の労力で最大限の意味を理解してしまう言葉でしょう。わざとあいまいな言葉を使い、勝手に相手がつじつまを合わせるのを待っているんですね。

 相手が疑うだろう部分を、「法律事務所」「遺失物預かり」などのもっともらしい最小限の労力の言葉で補う。すると、再び受け手は勝手に解釈する。そして、最終的に信じてしまう……。

 頭の良い人であれば、それこそ最大限の意味を理解するスピードが速いため、意外に引っかかってだまされてしまうのでしょう。頭の良い人が、うたぐり深い人とは限りません。うたぐり深ければ、当然、被害に遭うケースは少ないはず。ですが、「私は頭が良いから大丈夫」と過信するのは、非常に危ういというわけです。

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