食事の西洋化は米軍の食料援助から始まった 戦前は糖尿病が少なかった
読者の中には、昭和30年代にキッチンカーと呼ばれる移動販売車が全国を走り回っていたことを覚えている人もいるかと思います。米国産の小麦や大豆を使う料理を実演して、日本の食卓に西洋料理を浸透させる役割を果たしました。また、当時はまだ珍しかったテレビ放送でさまざまな料理番組が放映され、ハンバーグやクリームシチュー、コロッケやグラタンといった小麦粉、肉、牛乳、卵を多く使われる料理を紹介していました。
むろん、キッチンカー、テレビの料理番組、婦人雑誌の料理コーナーすべてが米国産の農産物を日本人に購入させるための仕掛けというわけではないでしょうが、日本人の食生活を大きく変化させるきっかけになったのは間違いありません。
ただし、西洋料理を取り入れたことで日本人の栄養状態は良くなり、脳出血や感染症などの病気が減るなど西洋料理が日本人にもたらした利点も大きかったのです。
ちなみに日本人の1歳までに亡くなる子供の数は昭和22年の1000人当たり76.7人から平成29年には1.9人まで激減しています。住環境や公衆衛生が格段に良くなったこともありますが、日本人の栄養摂取が良くなったこともその一因と考えられています。
(弘邦医院・林雅之院長)