荒川隆之
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荒川隆之薬剤師

長久堂野村病院診療支援部薬剤科科長、薬剤師。1975年、奈良県生まれ。福山大学大学院卒。広島県薬剤師会常務理事、広島県病院薬剤師会理事、日本病院薬剤師会中小病院委員会副委員長などを兼務。日本病院薬剤師会感染制御認定薬剤師、日本化学療法学会抗菌化学療法認定薬剤師といった感染症対策に関する専門資格を取得。

【結膜炎】キノロン点眼薬が繁用され耐性菌の出現が懸念されている

公開日: 更新日:

 前回は麦粒腫についてお話ししましたが、目の感染症といえば「結膜炎」のほうが断然知られているのではないでしょうか。結膜炎はまぶたの裏と眼球前方を結び覆っている結膜が炎症を起こす疾患で、罹患すると目が赤く充血して、痛みや目やにが出る場合もあります。

 結膜炎には抗菌点眼薬、特にキノロン点眼薬が使用されるケースが多く見られます。処方されている抗菌点眼薬のうち90%以上がキノロン点眼薬といったデータもあるようです。当連載でこれまで何度もお話ししてきたように、使用頻度が増えるとその分だけ耐性菌も増えることが多くあります。

 細菌性結膜炎の原因菌としては黄色ブドウ球菌や肺炎球菌、インフルエンザ菌などが挙げられますが、昨今は「コリネバクテリウム」による結膜炎が増加しているといわれています。そして、このコリネバクテリウムのキノロン高度耐性が問題視されているのです。もちろん、キノロン点眼薬の使用頻度が増えるとコリネバクテリウムだけでなく、ほかの菌の耐性化が進むことも予想されます。

 また、結膜炎は細菌性とは限らず、アレルギー性やウイルス性などの結膜炎もあります。これらの場合、抗菌点眼薬は無効です。抗菌点眼薬を使用するケースだとしてもキノロン点眼薬以外にも種類があり、医師から適切なものを処方してもらうほうがよいでしょう。目が充血したから以前に使った抗菌点眼薬を再び使う……といった行為は不衛生であることや薬の期限切れといった心配だけでなく、耐性菌増加の観点からも避けるべきです。

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