心臓病のリスク因子「プラーク」は手術中に取り除く場合もある
スタチンの服用で消失するケースも
家族性高コレステロール血症に該当する人、生活習慣の改善を行ってもLDLコレステロール値が高い場合、すでにプラークができてしまっていたり、高血圧や糖尿病など冠動脈疾患のリスク因子が多い場合などは薬物療法が行われます。その際、広く使われているのが「スタチン」という薬です。スタチンは体内でのコレステロール合成を抑制するという主作用に加え、血管内皮機能の改善、心筋保護、抗炎症といったさまざまな作用を持つと報告されています。
すでにプラークができていても年齢が若い患者さんでは、スタチンの服用によってプラークが消失し、血管の壁がすっかり改善するケースもあります。スタチンの抗炎症作用によってプラークが最終的にかさぶた状になり、少しずつ血流に洗われてきれいになるのです。
スタチンには筋毒性の副作用があり、筋肉が破壊される横紋筋融解症の発症や、最近は常用していると筋萎縮性側索硬化症(ALS)の発症リスクが10倍になるとの報告もありました。ただし、そうした副作用が起こるのは極めてまれなケースですし、海外では大腸がんや乳がんの罹患リスクを低減させたという良い報告もあります。副作用を恐れて服用しない選択をした場合、今度は動脈硬化性疾患を招いて命を落とすリスクがアップします。信頼できる医師のもとで、定期的に血液検査を受けながら服用すれば、メリットがとても大きい薬といえます。
ほかにLDLコレステロール値を下げる薬として、2016年からは注射薬のPCSK9阻害薬も登場しました。家族性高コレステロール血症の人や、心筋梗塞の既往があってスタチン単独では数値が低下しない人、糖尿病かつ動脈硬化性疾患がある人に使われています。
すでにプラークがある患者さんの場合、こうした薬物治療で安定化させた後、心臓疾患があって手術が必要であれば、その手術の際にプラークも一緒に処置します。
先日、大動脈弁狭窄症の手術を行った患者さんも、術中に上行大動脈にプラークがあるのを見つけ、さらにプラークをめくってみると下に血腫ができていました。
大動脈解離を起こす“初期の初期”といえる段階です。そこで、プラークと血腫を取り除き、傷ついた血管を縫い縮めて解離が起こりにくくなるような処置を行いました。もし、プラークをそのままにしておいたら、いずれ大動脈解離を起こして突然死していた可能性があります。
このようなリスクを回避するためにも、まずはプラークができないような生活習慣を心がけ、健診結果でコレステロール値が高かった場合にはしっかりと薬物治療を受けていただきたいと思います。
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