新しい心筋症「TGCV」は診断技術の進歩により明らかになった
「中性脂肪蓄積心筋血管症(TGCV)」という心臓疾患があります。体内の余分な中性脂肪が心臓の筋肉(心筋)や冠動脈の細胞内にたまり、心臓肥大や動脈硬化を招いて重症の心不全や狭心症、心筋症、不整脈などを起こします。2008年に日本で報告された新しい疾患で、心臓が脂肪細胞の塊のようになってしまうことから、「心臓の肥満」とも呼ばれています。現時点では原因不明で、治療法も確立していない希少難病です。
大阪大学の平野賢一特任教授が代表研究者を務めるTGCV研究班の報告によると、22年12月時点のTGCVの累積診断数は640例で、そのうち原発性TGCVは11例中6例、特発性TGCVは629例中87例が死亡していたといいます。特発性TGCVの3年生存率は80.1%、5年生存率は71.8%と、その予後が拡張型心筋症と同等だったことから、TGCVの指定難病化と治療薬の早期承認が強く望まれるとしています。
TGCVと同じように、心筋症には予後が悪いタイプがいくつもあります。たとえば、先ほど触れた「拡張型心筋症」は、心筋細胞が変性してとりわけ左心室の筋肉が収縮する働きが低下して左心室が大きくなり、うっ血性心不全を起こして突然死を招く危険がある病気です。「特定疾患」に指定されている代表的な心臓難病です。